November, 16, 2022, 福岡--九州大学大学院と他大学の研究者で構成される研究グループは、世界有数の大型レーザである大阪大学レーザ科学研究所の激光XII号を用いて、高エネルギープラズマ中で、太陽フレアと同様、磁力線が繋ぎ替わるとともにプラズマが加熱・加速される様子と、局所的なプラズマ挙動を計測することに成功した。
磁気リコネクションは、人工衛星による”その場”観測や太陽観測、数値シミュレーション等で研究が進められてきた。
今回、研究グループは、レーザプラズマを用いた「レーザ宇宙物理学実験」で、人工衛星観測では不可能なプラズマの大域構造と、磁場が繋ぎ替わる場所でのプラズマの計測を同時に行うことに成功した。プラズマ中に計測用レーザを入射して散乱光スペクトルを測定することで、磁場が繋ぎ替わる微小空間のプラズマ挙動を詳細に調べた。その結果、逆向きの磁場を維持する電流の発生と、磁場の繋ぎ替わりを示す電流消失、磁気リコネクションによるプラズマの加熱・加速が明らかになった。
今後、この実験手法を用いることで、50年以上未解決な磁気リコネクションの駆動メカニズムやエネルギー変換過程の解決に大いに貢献できると期待される。
磁力線再結合(磁気リコネクション)は、太陽フレアや地球磁気圏、核融合プラズマ等、様々なプラズマ中で普遍的に観測され、磁場からプラズマへのエネルギー変換、宇宙線(高エネルギー荷電粒子)の加速や、核融合プラズマの閉じ込め悪化を引き起こす。しかしその現象を完全に説明できる理論はまだ無く、磁力線が繋ぎ替わるメカニズムやどのようにエネルギー変換が決まるのかなど多くの点が未解明である。
研究成果は2022年11月10日(木)に米国科学誌Physical Review Eに掲載された。
研究グループ
九州大学大学院総合理工学研究院の森田太智助教、松清修一准教授、諌山翔伍助教、青山学院大学・山崎了教授、田中周太助教、富山大学・竹崎太智助教、北海道大学・富田健太郎准教授、大阪大学・坂和洋一准教授、蔵満康浩教授ら
(詳細は、https://www.kyushu-u.ac.jp)