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EPFL、”Grätzel”ソーラセル、新記録達成

November, 15, 2022, Lausanne--EPFL研究チームは、色素増感太陽電池のパワー変換効率を直射日光で15%、周囲光条件で30%を超える成果を発表した。

メソスコピック色素増感太陽電池(DSCs)は、1990年代にBrian O’ReganとMichael Grätzel、EPFL教授が発明した。後者の名前をとって世界的に有名なGrätzel電池となっている。DSCsは、色素化合物、光増感物質により光を電気に変換する。色素化合物は、光を吸収し、電子を酸化物ナノ結晶アレイに注入し、続いて電流として収集される。

DSCsでは、光増感性物質がナノ結晶メソポーラス二酸化チタン膜面に着けられ(吸収され)ており、それがレドックス電解質、または固体電荷輸送材料で吸収される。設計全体の狙いは、光増感剤からデバイスあるいは蓄積ユニットなど電気出力を移動させて電力を生成すること。

DSCsは透明であり、ローコストに多色製造可能である。また、すでに天窓、グリーンハウス、グラスファサード、SwissTech Convention Center装飾用などに使用されている。加えて、DSCsの軽量、柔軟バージョンは、イアフォン、Eリーダーなどポータブル電子機器の電力供給用に商用大量販売されている。また、環境光を利用することでIoTsでも利用されている。

光増感剤やDSCsの他のコンポーネントの最近の進歩が、太陽光と環境光の両方でDSCsのパフォーマンスを改善している。しかしDSC効率を強化するカギは、二酸化チタンナノ粒子膜表面上の色素分子のアセンブリの理解と制御にある。それが電荷の生成を助けるのである。

1つの方法は共感、相補的光吸収を持つ2またはそれ以上の異なる色素でDSCsを製造する化学的製造アプローチである。共感により、DSCsのパワー変換効率を世界記録に到達した。恐らく、光スペクトル全域か光を吸収できる色素を組み合わすことができるからである。とは言え、共感は、場合によっては効果がないことが分かっている。高い光吸収とパワー変換効率を達成できる適切な組合せを見つけるのは、骨の折れる分子設計、合成、スクリーニングだからである。

今回、EPFLのGrätzel and Anders Hagfeldtグループの研究グループは、2つの新設計光増感色素分子を詰め込んでDSCのPV性能を強化する方法を開発した。それとともに、新しい光増感剤は、全可視光域から定量的に光を取り込むことができる。その新技術は、ナノ結晶メソポーラス二酸化チタン表面のヒドロキサム酸誘導体の予備吸収モノレイヤを必要とする。これは、2つの増感剤の吸収を減速し、二酸化チタン面の秩序だった、密集した増感剤層の形成を可能にする。

このアプローチでチームは、標準グローバルシミュレート太陽光で電力変換効率15.2%のDSCsを開発できた。長時間動作安定性テストは、500時間を超えた。活性エリアを2.8㎠に増やすことで、電力変換効率は、広い範囲の環境光強度で28.4% – 30.2%に拡大し、安定性は抜群である。

「われわれの成果は、高性能DSCsへの容易なアクセスに道を開き、エネルギー源に周囲光を利用する低電力電子機器に電力供給、バッテリ置き換えとしてのアプリケーションに見通しは有望である」と研究者は、コメントしている。
(詳細は、https://actu.epfl.ch)