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赤外光を照射した半金属における巨大屈折率分散の発見と機構解明

November, 14, 2022, 東京--東京大学物性研究所の室谷悠太 特任研究員、神田夏輝 助教および松永隆佑 准教授らの研究グループは、同研究所の池田達彦 助教、吉信淳 教授および小林洋平 教授ら、および米国の研究グループと協力して、半金属に赤外光を照射すると光学的性質が劇的に変化して巨大な屈折率分散が生じることを発見し、そのメカニズムを解明した。

固体材料は自由に動き回る電子の有無によって金属と絶縁体に大別することができ、それぞれ全く違った光応答を示す。しかし、金属と絶縁体の中間のような性質を持つ半金属の場合には、金属的な応答と絶縁体的な応答の両方が起こって互いに影響を及ぼすため、強い光を当てたときに何が起こるかはよく理解されていない。
 研究では、物性研究所で開発された精密な分光技術を駆使して、近年トポロジカル半金属と呼ばれて注目されているヒ化カドミウムに一定の周波数を持つ強い赤外光を照射し、光応答の変化を詳細に調べた。

その結果、赤外光の周波数よりわずかに低周波側では光吸収が著しく増大する一方、わずかに高周波側では逆に吸収が減少してむしろ光が増幅されることを発見した。このとき屈折率が周波数に対して非常に急峻に変化するという、巨大な屈折率分散を示すことも分かった。詳細な理論計算と比較することで、この特異な現象は、誘導レイリー散乱と呼ばれる非線形光学効果が自由電子のプラズマ振動の影響を受けて増大したものであることを明らかにした。このように巨大な屈折率分散を持つ物質を使うと、スローライト(遅い光)を生成できることが知られており、光情報処理における応用が期待されている。従来のスローライト生成技術に関する類似の研究では、光吸収が起こりにくい絶縁性物質を極低温まで冷却する例がよく知られているが、この研究では、散逸が起こりやすい金属的な物質を使って、室温で無散逸スローライト生成を可能にする道筋を示した。今後このような半金属の非線形性を通して更なる新規機能性が開拓されることが期待される。
 研究成果は国際科学雑誌Physical Review Lettersの2022年11月10日付けオンライン版に公開された。

(詳細は、https://www.issp.u-tokyo.ac.jp)