November, 11, 2022, Santa Barbara--UCSBの研究チームは、極低温と室温のコンピュータの間の相互作用を簡素化するデバイスを開発している。
極低温で動作する最先端技術は多い。超伝導マイクロプロセッサや量子コンピュータは、コンピュテーションの変革を約束するが、研究者は、その繊細な状態を保護するために絶対零度(ー273.15℃)をわずかに上回る状態に保つ必要がある。しかし、極低温コンポーネントは、室温システムと相互作用しなければならないので、エンジニアにとっては難題であり、チャンスである。
UCSBのPaolo Pintusをリーダーとする国際研究チームが、極低温コンピュータと通常のコンピュータとが話せるように支援するデバイスを設計した。メカニズムは、磁界を使って電流からのデータを光パルスに変換する。次に、光は光ケーブルで伝播する。光ケーブルは、通常の電気ケーブルよりも伝送できる情報量が多く、同時に極低温システムへの熱の漏出を最小化する。チームの研究成果は、Nature Electronicsに発表された。
「このようなデバイスは、例えば超伝導ベースの先端技術とのシームレスな統合を可能にする」とUCSBのオプトエレクトロニクス研究グループのプロジェクトサイエンティスト、Pintusは説明している。超伝導は、エネルギーロスなく電流を流すが、一般に、正しく動作するにはー450°F以下が必要である。
現時点では、極低温システムは標準金属線を使用して、室温エレクトロニクスと接続している。残念ながら、これらの配線は、低温回路に熱を伝え、一度にわずかなデータ量しか転送できない。
研究チームは、これら両方の問題に同時に対処したかった。「ソリューションは、金属ケーブルで電子を使う代わりに情報伝送に光ケーブルで光を使うことだ」と同氏は言う。
ファイバオプティクスは、現代の通信では標準である。これらの細いガラスケーブルは、情報を光パルスとして金属ケーブルが電荷を運ぶよりも遙かに高速に伝送する。結果、光ケーブルは、同じタイムスパンで従来の配線よりも1000倍多くのデータを転送できる。またガラスは、優れた絶縁体であり、極低温コンポーネントへの熱移転は金属線よりも遙かに少ない。
とは言え、ファイバオプティクスの利用は、特別なステップを必要とする。電気信号からのデータを変調器を使って光信号に変換する。これは、周囲条件ではルーティーン処理だが、極低温では工夫が必要だ。
研究チームは、電気入力を光パルスに変換するデバイスを構築した。電流は磁界を生成する。これは、合成ガーネットの光学特性を変える。研究者は、これを「磁気光学効果」と言う。
磁界が、ガーネットの屈折率を変える、基本的に光に対するその「密度」を変える。この特性の変化によりPintusは、マイクロリング共振器を周回させ、ガーネットと相互作用する光の振幅を調整できる。これが明暗パルスを作り、電話線のモールス信号のように、光ケーブルで情報を運ぶことになる。
「これは、磁気光学を使ってこれまでに作製された初の高速変調器である」(Pintus)。
他の研究者は、コンデンサのようなデバイス電界を使って変調器を造った。しかし、これらの変調器は通常、電気インピーダンスが高い、交流電流の流れに抵抗するので、超伝導にはうまく適合しない。超伝導は、本質的にゼロインピーダンスだからである。磁気光学変調器は、低インピーダンスであるので、研究チームは、超伝導回路との整合性がよいと考えている。
チームは、その変調器を可能な限り実用的にするための対策に取り組んだ。それは1550nm波長で動作する、インターネット通信で使われる光波長と同じである。また、標準的な方法で製造され、その製造は簡素化されている。
合成ガーネットは、東京工業大学の研究グループが成長させ、評価した。同グループは、過去に様々なプロジェクトで、UCSBの電気・コンピュータ工学のチームと協力してきた。
他にBBN Raytheonの量子コンピューティング・エンジニアリンググループが種々の超伝導回路を開発しており、これらは新技術の恩恵を受ける。BBNの研究者は、デバイスの低温試験を行い、実際的な超伝導コンピューティング環境におけるそのパフォーマンスを評価した。
デバイスの帯域は、約2Gb/s。室温のデータリンクには遠く及ばないが、Pintusによると、最初のデモンストレーションには有望である。チームは、例えば、ガーネットよりも300倍効率的なユウロピウムベースの材料に置き換えることで、高いビットレーを実現できると考えている。
(詳細は、https://www.news.ucsb.edu)