October, 7, 2022, Lyngby--デンマーク工科大学(DTU)のHao Hu と Yong Liuは、従来のOPAsのマルチエミッタをシングルエミッタになるスラブグレーティングで置き換える新しいOPAを開発した。
この設計により、ビーム品質を犠牲にすることなく、広い視野のビームステアリングが可能になる。デバイスは、小型で、コスト効果が優れており、ハイパフォーマンスLiDARシステムを可能にする。技術は、自律走行車から仮想現実までのLiDARアプリケーションに恩恵をもたらす。
DTU研究チームは、新しいチップベースビームステアリング技術を開発した。これは、小型、費用対効果の優れた、高性能LiDARシステムに有望なルートを提供する。LiDARは、レーザパルスを利用して、シーンあるいは物体についての3D情報を取得する。これは、自動運転、フリースペース光通信、3Dホログラフィ、バイオメディカルセンシング、仮想現実など、幅広いアプリケーションで利用されている。
「光ビームステアリングは、LiDARシステムのキーテクノロジーであるが、従来の機械ベースビームステアリングシステムは大きく、高価、振動の影響を受けやすく、スピードに制約がある。チップベース光フェーズドアレイ(OPAs)は、非機械的方法で素早く、正確に光を操作する。これまでのところ、これらのデバイスは、低ビーム品質であり、視野は一般に100°以下だった。
Opticaでは、Hu と共著者Yong Liuが新しいチップベースOPAについて説明している。これは、OPAsを悩ましてきた問題の多くを解決する。研究チームは、そのデバイスが、エイリアシングとして知られている重要な光学的アーチファクトを除去し、ビーム品質を維持しながら広い視野でビームステアリングを達成できることを示している。これは、LiDARシステムを大幅に改善する組合せである。
「われわれの結果は、光ビームステアリングの領域では画期的である。この開発は、ローコストでコンパクトなOPAベースのLiDARの基盤を形成する。これにより、LiDARは、様々なアプリケーションで広く利用されるようになる。運転や駐車を支援し、安全性を高めるハイレベルのADASなどである」(Hu)。
新しいOPAの設計
OPAsは、特殊な光パタンを形成するために、電子的に光位相プロファイルを制御することでビームステアリングを行う。ほとんどのOPAsは、導波路アレイを使って多数の光ビームを放出する。次に遠視野(エミッタから離れたところ)に干渉を適用してパタンを形成する。しかし、これらの導波路エミッタは一般に相互に離れており、遠視野にマルチビームを生成することにより、エイリアシングとして知られる光学的アーチファクトを生み出す。エイリアシングエラーを回避し、180°の視界を達成するには、エミッタは近接していなければならないが、これは隣接エミッタ間で強いクロストークの原因となり、ビーム品質の劣化となる。したがって、これまでは、OPA視野とビーム品質の間にトレードオフがあった。
このトレードオフを克服するために研究チームは、新しいタイプのOPAを設計した。これは、従来型OPAsのマルチエミッタをスラブグレーティングで置き換え、シングルエミッタとしたものである。このセットアップは、エイリアシングエラーを除去する。スラブグレーティングの隣接チャネルを相互に近接させることが可能だからである。隣接チャネル間の結合は、スラブグレーティングでは有害ではない。それが、近接場で干渉とビーム形成を可能にするからである(シングルエミッタに近い)。すると光は、所望の角度で遠視野に放出可能となる。研究チームは、背景ノイズを抑制し、サイドローブのような光学的アーチファクトを減らすために付加的光学技術を適用した。
高品質と広い視野
「われわれのチップベースOPAは、前例のないパフォーマンスを示しており、180°視野でエイリアシングフリー2Dビームステアリングと低いサイドローブレベルを備えた高いビーム品質を同時に達成することでOPAsの長年の問題を克服している」。
新しいデバイスをテストするために研究チームは、180°の視野で水平方向に沿って平均遠視野光パワーを計測するために特殊なイメージングシステムを構築した。チームは、この方向でエイリアシングフリーのビームステアリングを実証した。一部、ビーム劣化が見られたものの、±70°以上のステアリングが含まれている。
次にチームは、波長を1480nmから1580nmにチューニングすることで垂直方向でビームステアリングの特性評価を行い、13.5°のチューニングレンジを達成した。最後に、チームは、OPAを使って、角度-60°, 0° および 60°に中心がある文字“D”, “T” および “U”の2D画像を形成し、OPAの多様性を示した。実験は、ビーム幅2.1°で行われた。研究チームは、分解能をさらに高くし、距離を延ばしたビームステアリングを実現するためにビーム幅を狭くしようとしている。
(詳細は、https://www.fotonik.dtu.dk/)