September, 15, 2022, 東京--日本電信電話株式会社(NTT)は、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)と共同で、グラフェン光検出器の世界最速ゼロバイアス動作(ソース・ドレイン電極間に電圧を印加しないで行う動作)(220 GHz)を実現し、さらにグラフェンにおける光-電気変換プロセスを解明した。
グラフェンは、テラヘルツ(THz)波から紫外光までの広帯域の光に対して高感度かつ高速に電気応答すると期待されており、光検出器として利用することにより、既存半導体デバイスが動作しない波長領域でも高速の光-電気変換が可能になる有望な材料。しかし、これまでゼロバイアス下における実証動作速度はデバイス構造や測定機器の問題により70 GHzに限られていた。またこれらの問題により、グラフェン本来の性質を調べられておらず、光検出器としての動作原理が解明されていなかった。
これに対し、この研究ではデバイス構造に由来する電流遅延を取り除き、オンチップTHz分光技術を用いて電流を高速で読み出すことにより、220 GHzの動作速度を実証することに成功した。また、動作速度と感度にはトレードオフの関係があることを示した。さらに、これらの結果を解析することで、グラフェンにおける光-電気変換プロセスを解明することにも成功した。得られた知見により、感度を優先した光センサや速度を優先した光-電気信号変換器など、使用用途に合わせてグラフェン光検出器の設計を最適化することが可能となる。
研究成果は、2022年8月25日英国科学誌 Nature Photonics にオンラインで掲載された。
技術のポイント
(1) ZnO薄膜における抵抗率等の特性は成膜温度等によって変化する。この成膜温度を適切な値に調整することにより、直流電圧は印加可能であり、同時に高周波に対しては絶縁的とすることが可能。このようなZnO薄膜をゲートとしてもちいることで、ゲート材料の高周波応答によって生じる電流遅延を回避した。
(2) グラフェンを光励起することで生じたTHz電流をオンチップで光伝導スイッチを通して検出することにより、測定帯域 ~1 THzを達成した。これにより、高周波電流をオシロスコープ等の電子機器で測定する従来手法での測定帯域~100 GHzによる制限を取り除いた。
(詳細は、https://group.ntt/jp)