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TU Wien、微細な表面特性を見る顕微鏡

September, 14, 2022, Wien--TU Wienの研究チームは、長年、表面研究分野で国際的な注目を集めてきた。新しい顕微鏡法に対する長年の取組により、結晶表面の個別原子の写真、ビデオまでも撮れるようになった。これにより、どんな化学的、物理的プロセスがそこで起こっているかを研究できるようになっている。これは、触媒に対する理解向上、さらなる開発のために重要である。

オーストリア科学財団FWF助成により特別研究分野TACO (“Taming Complexity in Materials Modelling”)「材料モデリングの複雑さを和らげる」は、2021年3月に立上げられた。そこでは、TU Wienは、ウイーン大学と協働している。一方で、これは表面プロセスの実験的研究に関与し、他方でこれらの現象のコンピュータ支援モデリングに関与している。新しい論文発表でTACOは、現代表面物理学が提供する並外れた可能性を示すことができた。個々の原子をマッピングできるだけでなく、微妙な特性を確定し、これにより、以前には疑われてさえなかった個々の原子間の差を計測する。

Nature Communicationsの論文で研究チームは、タンタル酸カリウム表面上の電子分布を判読する方法を示している。また、2番目の論文は、この物質の表面化学に驚くべき洞察を加えている。

一酸化炭素チップが一酸化炭素を計測
一酸化炭素(CO)分子を、極低温でタンタル酸カリウム表面上に置いた。その後、表面を原子間力顕微鏡(AFM)でスキャンした。しかし、表面スキャンに、通常通りに金属チップを使わなかった。代わりに、顕微鏡の先端(チップ)は、”官能化”されていた。1個のCO分子をチップに設置し、この分子が一種の”feeler(触覚)”として働く。これが、微細距離で表面上を動かされる。

これによりAFMの先端は化学的に不活性になる、つまり調べられている表面上にある分子と反応しない。同時に、チップ上のCO分子は、表面上のCO分子によって退けられる、この反発力が計測され、表面の高解像度画像が得られる。

「この計測の驚くべき結果は、われわれが表面上に2つの異なるタイプのCO分子を見いだしたということである」(Martin Setvin)。「画像では、非常に明るく見えるものがあるが、別のものは非常に暗い、それらが実際に置かれているタンタル原子は、一見、同じに見える」。しかし、研究チームは暗いCO分子が、明るいものよりも表面に結合していることを一段とはっきり見ることができる。表面を145K以上にすると、暗い分子だけが残り、これらの温度では、他のものはすでに表面からなくなっていた。

これを説明するには複雑なコンピュータシミュレーションが必要だった。オーストリア最大のスーパーコンピュータ、VSC (Vienna Scientific Cluster)を使って、複雑な密度汎関数理論計算を実行した。これにより、いわゆるバイポーラロンが、2つのタイプのCO間の差に関与していることを示すことができた。

バイポーラロンは準粒子である。つまり複数の粒子間の相互作用状態であり、これは量子力学で独自の粒子として記述できる。タンタル酸カリウム表面の場合、これらのバイポーラロンはタンタル原子に対する2つの過剰電子のホーミングから生ずる。これが、今度は表面の原子の幾何学的配列に影響を与える。

この計算は、バイポーラロンの存在がCO分子の表面への結合を強化することを示していた。強結合”ダーク”分子は、したがって、バイポーラロンが配置されている側であり、他方、弱い結合のものが画像では明るく見える。

これらの結果は、触媒プロセスの理解に別の重要な貢献である。また、TACOにおける特殊研究領域の一環として開発されている方法の究極的効率の証拠である。

(詳細は、https://www.tuwien.at)