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Science/Research 詳細

赤外光で30mワイヤレスパワー転送

September, 5, 2022, Washington--韓国世宗大学の研究チームリーダー、Jinyong Haは、「デバイスにワイヤレスで電力を供給できる能力により、われわれは電話やタブレットのパワーケーブルを持ち回る必要がなくなる。また、製造プラントでIoTデバイスやモニタリング用センサなど、様々なセンサにも電力を供給できる」と説明している。

Optics Expressに発表された論文は、新しいシステムについて説明している。これは、赤外光を使い、高いパワーレベルを安全に転送する。ラボテストによると、それは、最大30メートルの距離で400mWの光パワーを転送できる。このパワーは、センサ給電には十分である。また、さらなる開発により、モバイル機器充電に必要なレベルに増やすことができる。

複数の技術が長尺ワイヤレスパワー転送のために研究されている。しかし、メートルレベルの距離で、安全にパワーを転送することは困難だった。この課題を克服するために研究チームは分散レーザ給電と呼ばれる方法を最適化した。このアプリケーションで最近、これが注目を集めている。つまり、少ない光損失で安全なハイパワー照射を提供できるからである。

「ほとんどの他のアプローチは、受信デバイスが特殊な充電クレードルにあり、固定でなければなないが、分散レーザ充電により、トランスミッタとレシーバが相互に見通し線内にあれば、トラッキングプロセスなしでセルフアライメントが可能になる。物体あるいはヒトが見通し線を遮ると、それは自動的に安全なローパワーデリバリモードへシフトする」とHaは説明している。

長尺ワイヤレス
分散レーザ給電は、従来のレーザにやや似ているが、一つのデバイスに組み込まれているレーザキャビティの光コンポーネントではなく。それらはトランスミッタとレシーバに分離されている。トランスミッタとレシーバが見通し線内にあると、レーザキャビティは、空気、つまりフリースペースで、それらの間に形成され、これによりシステムは光ベースの電力を供給できる。障害物がトランスミッタ-レシーバの見通し線を切断すると、システムは自動的にパワーセーフモードに切り替わり、空気中で危険のないパワー供給になる。

新しいシステムでは、研究チームは、中心波長1550nmのEDFA光パワー光源を利用した。この波長範囲は、スペクトルの最も安全な領域にあり、使用されているパワーでヒトの眼や皮膚に危険を及ぼさない。別の重要コンポーネントは、波長分割多重フィルタ。これは、フリースペース伝播で安全限界内の光パワーでナローバンドビームを作る。

「レシーバユニットでは、360°トランスミッタ-レシーバアライメントを容易にするためにわれわれは、ボールレンズリトロリフレクタを組み込んだ。これによりパワー転送効率が最大化された。システム全般のパフォーマンスがボールレンズの屈折率に依存していることを実験的に観察した。屈折率2.003が最も効果的だった」とHaは説明している。

ラボ試験
システムのデモンストレーションにチーは、トランスミッタとレシーバ間の距離30メートルを設定した。トランスミッタはEDFA光源であり、レシーバユニットは、リトロリフレクタ、光信号を電力に変換するフォトボルテイック(PV)セル、電力が供給されると光を発するLEDを含んでいる。このレシーバは、約10×10㎜であり、デバイスやセンサに簡単に組み込める。

実験結果は、シングルチャネルワイヤレス光パワー転送システムが、30メートルの距離、チャネル線幅1nmで、400mWの光パワーを供給できることを示した。PVがこれを85mWの電力に変換した。研究チームは、見通し線がヒトの手で遮られると、システムが自動的に安全パワー転送モードにシフトすることも示した。このモードでは、トランスミッタは、信じられないような低強度の光を生成した。これは、ヒトには無害だった。

「工場で電力コードを置き換えるレーザ給電システムを使うことで、メンテナンスと置き換えコストが削減できる。これは、特に電気接続が干渉の原因となり、あるいは火災の危険があるような苛酷環境では有用である」(Ha)。

研究チームは、そのシステムを実証したので、それをさらに実用的にするために取り組んでいる。例えば、フォトボルテイックセル(PV)の効率が向上すると、光の電力への変換は改善される。研究チームは、そのシステムを使ってマルチレシーバを同時充電する方法の開発を計画している。