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コンパクトQKDシステム、サテライトベース量子ネットワークのコスト効果改善

August, 26, 2022, Washington--中国科技大学の研究者は、中国宇宙ラボTiangong-2搭載のコンパクトな量子カギ配送(QKD)端末および4地上局を使って宇宙と地上とのQKDネットワークの実験実証を報告している。新しいQKDシステムは、研究チームがMicius衛星向けに開発したシステムの半分以下の重量。Miciusは、世界初の量子暗号化仮想通信会議を実施するために利用された。

デモンストレーションは、小さな人工衛星のコンステレーションをベースにした実用的なQKDへの重要な一歩。これは、世界量子通信ネットワーク構築への最も有望なルートの一つを考慮したセットアップ。

「QKDは、二箇所の遠く離れた端局間で情報をエンコードするためにシングルフォトンを使うことで無条件のセキュリティを提供する。われわれが開発したコンパクトなシステムは、小さなサテライの利用を可能にすることでQKD実装のコストを削減できる」と中国科技大学、研究チームメンバー、Cheng-Zhi Pengは、説明している。

同氏と中国の他の研究機関からの研究者は、その新システムと実験結果について、Opticaで説明している。研究チームは、赤道に対して、様々な角度、傾斜で周回する衛星ネットワークを構築することでQKDパフォーマンスが、強化できることを確認した。

「われわれの新しい研究は、様々な軌道タイプを持つサテライトのコンステレーションと組み合わせたコンパクトなサテライトペイロードベースの宇宙-地上QKDネットワークの実行可能性を実証している。近い将来、政務、外交および金融などの高いセキュリティを必要とするアプリケーションでこの種のQKDシステムが利用可能になる」とPengはコメントしている。

QKDシステムの縮小
QKDは、光の量子特性を使って、データの暗号化と解読のために、安全なランダムキーを生成する。以前の研究では、研究グループは、Micuius衛星を使って、衛星-地上QKDと衛星-リレイ大陸間量子ネットワークを実証した。しかし、その衛星搭載に利用されたQKDシステムは、大きく、高価であった。サイズは大きな冷蔵庫程度であり、システムの重量は約130kg、必要な電力は10Wだった。

中国の量子コンステレーション計画の一環として研究チームは、より実用的な宇宙-地上QKDネットワークの開発と実証を探求した。このために、チームは、Tiangong-2 Space LabがサテライトQKD端局として動作できるようなコンパクトなペイロード開発した。QKDペイロードは、トラッキングシステム、QKD送信機とレーザ通信送信機で構成されており、重量は約60kg、必要な電力は80W、サイズは2つの電子レンジ程度。

「このペイロードは、容積、重量およびコストを削減するために可能な限り統合された。同時に、宇宙と地上間のQKD実験サポートに必要な高いパフォーマンスを達成した。また、それは耐久性が非常に高くなければならなかった。打ち上げ中の激しい振動、宇宙の極端な熱真空環境などの苛酷な状況に耐えるためである」(Peng)。

チームは、2018年10月から2019年2月の異なる15日で、総計19のQKD実験を行った。その間に、宇宙ラボ単極と4地上局間でセキュアなキーの配信に成功した。これらの実験は、日中の背景ノイズの影響を回避するために夜間に行われた。

研究チームは、スペースラボの中傾斜軌道(~42°)が、一つの地上局の上を一夜に多数通過することを確認した。これは、生成されるキーの数を増やした。チームは、衛星ベースQKDネットワークのパフォーマンスと異なる軌道タイプを比較するモデルも構築した。チームは、スペースラボのような中傾斜軌道の衛星と極地域を移動する太陽同期軌道との組合せがベストのパフォーマンスを達成することを見いだした。

新しいステップ
研究チームは現在、QKDシステムのスピードと性能を高め、コストを削減、日中の衛星と地上QKD伝送の実行可能性を探求することでQKDシステムの改善に取り組んでいる。「これらの改善により、多数の低軌道衛星を打ち上げることで、実用的な量子コンステレーションが作られる。そのコンステレーションは、中軌道から高軌道量子サテライトおよび地上のファイバベースQKDネットワークと組み合わせて、宇宙と地上統合量子ネットワークを実現する」(Peng)。

この研究の一部ではないが、合肥国立研究所と中国科技大学、中国の他の研究機関が開発したもっと小型の量子サテライトが7月27日に宇宙への打ち上げが成功した。この衛星はマイクロ/ナノサテライト、Miciusサテライトの約1/6の重量で、Optica論文で実証したサイズの1/3程度のQKDシステムを搭載している。その衛星は、リアルタイム衛星-地上QKD実験を実行するように設計されている。低コスト量子衛星コンステレーションの新たな重要な一歩である。