August, 24, 2022, Stanford--スタンフォードの研究チームは、あらゆる角度から効率よく光を集め、それを固定出力端子に集光できる見事なレンズを考案、設計、テストした。このような傾斜屈折率オプティクスは、固体照明、レーザカプラ、ディスプレイ技術などの光マネージメントで結合と解像度を改善するアプリケーションもある。
ソーラ技術は素晴らしい継続的な進歩しているが、問題は残っている。日の出から日の入りまで変動する角度から来る陽光のエネルギーを効率よく収集するにはどうするか。
ソーラパネルは、陽光が直接的に当たるときに最も効率よく機能する。可能な限り多くのエネルギーを捉えるには、多くのソーラアレイが、空を移動する太陽の方向へ活発に回転する。これによりソーラアレイは効率が向上するが、固定システムよりも構築と維持が高価で複雑である。
これらアクティブシステムは、将来的には必要でなくなるかも知れない。スタンフォード大学工学研究者、Nina Vaidyaが、降り注ぐ光を効率よく収集し、集光するエレガントなデバイスを設計した。光の角度や周波数は関係ない。そのシステムの性能、背後にある理論を説明した論文は、Microsystems & Nanoengineeringに発表した。著者は、Vaidyaと同氏の博士課程アドバイザー、Olav Solgaard、電気光学教授。Vaidyaは、現在サウサンプトン大学の准教授。
「それは、完全にパッシブなシステム。太陽のトラッキングにエネルギーは不要、可動部分もない。位置を変える光学的焦点なし、トラッキングシステムの必要性もないので、集光は極めて簡素である」(Vaidya)。
デバイスは、AGILE (Axially Graded Index Lens)と言われており、見かけによらず簡単である。先端を切り落としたピラミッドを逆さまにしたように見える。光は、角度によらず、正方形、タイル張りの上面に入り、漏斗に流しこまれ落ちて出力側にブライトスポットを作る。
プロトタイプでは研究チームは、表面に当たり、出力にスポットを作る光の90%以上を捉えることができた。これは、入力光よりも3倍明るかった。ソーラセルの上面層に導入すると、ソーラアレイはもっと効率的になり、ダイレクト陽光だけでなく、地球環境、大気、天候、季節により散乱させられていた拡散光も捉えることができる。
AGILEの最上層は、ソーラアレイを保護する既存のエンカプセルを置き換え、太陽の追跡を不要にし、冷却と個々のデバイスの狭小化ピラミッドの間を走る回路のためのスペースを作り、さらにもっと重要なことは、エネルギーを生成するために必要なソーラセルエリアの量が少なくなるので、コスト削減になる。また、その利用は地上のソーラ導入に限られない。宇宙へ送られるソーラアレイに適用されると、AGILEレイヤは、太陽トラッキングなしで集光し、放射能からの必要な保護にもなる。
完全なAGILE
AGILEの背後にある大前提は、虫眼鏡を使って晴れた日に葉に焼け跡をつくるのと同じである。虫眼鏡のレンズが太陽光線を小さな、明るい点に集光する。しかし虫眼鏡では、焦点は太陽と共に動く。VaidyaとSolgaardは、あらゆる角度から光線を集めるが、同じ出力位置に光を集めるレンズを作る方法を見いだした。
「われわれは、たとえ光源の方向が変わっても、光を取り込んで、同じ位置に光を集めるものを作りたかった。ディテクタあるいはソーラセルを動かし続け、あるいはシステムを光源に向けさせなければならないことは、望んでいない」(Vaidya)。
VaidyaとSolgaardは、滑らかに屈折率が増加する特注材料を使って散乱光を集め、集中させ、焦点へと曲げ、カーブさせることは理論的に可能であると判断した。屈折率とは、光が材料をいかに素早く進むかを説明する特性。材料の表面では、光は全く曲がらない。光が反対側へ到達するまで、光はほぼ垂直であり、集束される。
「最良のソリューションは、最も簡単なアイデアのことがよくある。理想的なAGILEは、その前面が空気と同じ屈折率であり、屈折率は徐々に高くなる。光は完全に滑らかなカーブで曲がる。しかし、実際の状況では、その理想的なAGILEにはならない」とSolgaardはコメントしている。
理論から現実へ
プロトタイプのために研究チームは、光を異なる角度に曲げる様々なガラスとポリマを層化し、傾斜屈折率材料として知られるものを作製した。層は、滑らかなカープの代わりに、光の方向を段階的に変える。これをチームは、理想的なAGILEに非常に近いと判断した。プロトタイプのサイドはミラー化して、間違った方向へ進む光が出力側へ跳ね返るようにする。
Vaidyaによると、最大の課題の一つは適切な材料を見つけ、作製することだった。AGILEプロトタイプの材料層は、近紫外から赤外までの広いスペクトルを透過し、その光を幅広い屈折率で出力側へ次第に曲げる。これは、自然には、あるい現在のオプティクス産業では見られない。使用したこれらの材料は、互いに共存できなければならなかった。一つのガラスが、熱に反応して膨張する率が他と異なると、デバイス全体が壊れる。また、機械加工して形を作り、耐久性を維持できなければならなかった。
「理論から実際にプロトタイプへ移行するのは、極めて難しい加工冒険の一つである。多くの理論的文献があり、そこには素晴らしいアイデアがあるが、実際の設計と材料で、以前には不可能と思われたことの限界を押し広げて現実に移行させるのは難しい」(Vaidya)。
多くの材料を調べ、新たな製法を開発し、多数のプロトタイプをテストした後、研究チームは、商用入手できるポリマとガラスを使って良好に機能するAGILEデザインを決定した。AGILEは、軽量、設計柔軟性のあるナノスケール表面粗さのポリマレンズを実現する著者たちの以前の研究で3Dプリンティングを使って製造された。
AGILEデザインがソーラ産業や他の領域にも採用されることをVaidyaは期待している。見込のあるアプリケーションは、レーザ結合、ディスプレイ技術、照明、旧来の照明法よりもエネルギー効率が向上する固体照明など。
(詳細は、https://news.stanford.edu)