August, 19, 2022, Castelldefels--ICFO, IFN-CNRおよびHeriot-Watt Universityの研究者は、Science Advancesで、ファイバ集積量子メモリと通信波長フォトンとのエンタングルメント実証を報告している。
量子メモリは、未来の量子インターネットの構成要素の一つ。それらがないと、長距離で量子情報を伝送したり、実際の量子ネットワークに拡張することは、不可能になる。これらのメモリは、qubitsの形でフォトンにエンコードされた量子情報を受信し、それを蓄積し、さらに読み出すというミッションを持つ。量子情報は、様々な材料系で実現可能である、例えば低温原子、あるいはドープされた結晶。
有用なメモリとなるには、蓄積能力の効率、耐久性、多重性など複数の要件を満たし、それらがサポートしている量子情報の品質を保証する必要がある。相当な研究問題となっている他の要件は、ファイバオプティックネットワークに直接組みこめる量子メモリの設計である。
近年の、量子技術ブームで、実際のネットワークへの組込みと導入を容易にするために既存の量子メモリの拡張性を改善する方向の多くの研究ある。そのような完全組込アプローチは、複数の物理的、工学的障害をともなう。優れたコヒレンス特性を維持するソリューションの発見などである。また、フォトンを光ファイバから量子ネットワークへ転送する効率的で安定なシステムとすること、同様に量子メモリシステムおよび、入力光とそのインタフェースの微小化。この全てが、デバイスの「標準」バルクバージョンで達成された同じ性能レベルを達成しながら、実行される必要がある。これは、これまでのところ、困難であることが証明されており、ファイバ集積量子メモリの現状の実現は、バルクメモリで達成されたものに遠く及ばない。
研究チームが発表した成果は、ファイバ集積量子メモリと通信波長フォトンとのエンタングルメントを実証することができている。
特殊量子メモリ
実験では、チームは、量子メモリとしてプラセオジウムドープの結晶を使用した。導波路は、メモリ内にレーザで描いた。これは、結晶内のマイクロスケールのカナルであり、狭いスペースにフォトンを閉込め、ガイドする。2つの同一の光ファイバが、その結晶の両端に取り付けられ、量子情報をもつフォトンとメモリの間に直接インタフェースができる。この実験セットアップは、量子情報とフォトン源との間にオールファイバ接続を可能にした。
この集積量子メモリがエンタングルメントを蓄積できることを証明するためにチームは、一つのフォトンがメモリに適合し、他方が通信波長に適合するエンタングルフォトンペア源を利用した。この新しいセットアップで、チームは2~28µsまでフォトンを蓄積し、蓄積後フォトンペアのエンタングルメントを維持することができた。得られた結果は、大きな改善だった。これまでに使用された他の以前のファイバ集積デバイスバルク量子メモリで観察されたパフォーマンスへのアプローチと比べて1000倍長い(3桁長い)エンタングル蓄積時間をチームが示したからである。これは、完全集積されたデバイスの性質により可能になった。これにより以前の達成よりも高度な制御系の利用が可能になった。最後に、通信波長では、チームは、システムが通信インフラストラクチャと完全に適合しており、長距離量子通信に適していることも証明した。
この種の集積量子メモリの実証は、多くの新しい可能性に道を開く、特に多重、拡張性、さらなる集積である。
(詳細は、https://www.icfo.eu/news/)