Science/Research 詳細

単一原子レベルで世界最速の2量子ビットゲートに成功

August, 15, 2022, 岡崎--自然科学研究機構・分子科学研究所の周諭来大学院生、Sylvain de Léséleuc助教、大森賢治教授らの研究グループは、ほぼ絶対零度に冷却した2個の原子を光ピンセットを用いてミクロン間隔で捕捉し、10ピコ秒(ピコ = 1兆分の1)だけ光る特殊なレーザ光で操作することによって、僅か6.5ナノ秒(ナノ = 10億分の1)で動作する世界最速の2量子ビットゲート(量子コンピューティングに必要不可欠な基本演算要素)を実行することに成功した。
 光ピンセットで整列させた冷却原子の人工結晶を超高速レーザで操作するこの超高速量子コンピュータは、現時点で開発が先行している超伝導型やイオントラップ型の限界を打ち破る全く新しい量子コンピュータ・ハードウェアとして期待される。

この成果は英国の科学雑誌「Nature Photonics」のオンライン版に2022年8月9日(日本時間)に掲載された。

研究の成果
2-1. 成果の概要:
研究グループは、ほぼ絶対零度に冷却した2個の原子を光ピンセットを用いてミクロン間隔で捕捉し、10psだけ光る特殊なレーザ光で操作することによって、僅か6.5nsで動作する世界最速の2量子ビットゲートを実行することに成功した。
 過去20年あらゆる量子コンピュータ・ハードウェアは、計算精度を劣化させる外部ノイズの影響から逃れるために、より速いゲートを追い求めてきたが、今回実現した世界最速の2量子ビットゲートはノイズよりも2桁以上速いので、ノイズの影響を無視することができる。光ピンセットで整列させた冷却原子の人工結晶を超高速レーザで操作するこの超高速量子コンピュータは、現時点で開発が先行している超伝導型やイオントラップ型の限界を打ち破る全く新しい量子コンピュータ・ハードウェアとして期待される。

今後の展開・この研究の社会的意義
過去20年あらゆる量子コンピュータ・ハードウェアは、計算精度を劣化させる外部ノイズの影響から逃れるために、より速いゲートを追い求めてきた。今回、冷却原子型ハードウェアで達成した6.5nsの超高速量子ゲートはノイズよりも2桁以上速いので、ノイズの影響を無視することが可能。冷却原子型の量子コンピュータは、現時点で開発が先行している超伝導型やイオントラップ型と比べて容易に大規模化が可能な点、および高コヒーレンスな点(量子の波としての純度が高い点)において画期的な潜在能力を有しており、次世代量子コンピュータ・ハードウェアとして世界中の産学官の注目を集めている。「ほぼ絶対零度に冷却したミクロン間隔の原子2個を超高速レーザで操作する」という全く新しい方法によって達成した今回の世界最速の超高速ゲートの実現は、冷却原子型ハードウェアへの世界中の注目を大きく加速させるものと期待される。
(詳細は、https://www.ims.ac.jp)