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MIT研究者、人工衛星用のセンサを3Dプリント

August, 12, 2022, Cambridge--MIT研究者は、軌道上の宇宙船用に初の完全デジタル製造プラズマセンサを作製した。これらのはプラズマセンサは、遅延電位アナライザ(RPAs)としても知られており、人工衛星が、大気の化学組成やイオンエネルギー分布の判定に使用する。

3Dプリントされ、レーザ切断されたハードウエアは、クリーンルームで製造される最先端の半導体プラズマセンサと同じように機能した。半導体プラズマセンサは、高価で、数週間の複雑な製造を必要とする。それに対して3Dプリントされたセンサは、数十ドル、数日で製造できる。

そのローコストでスピーディーな製造により、そのセンサは、CubeSatsに最適である。これらの安価でローパワー、軽量サテライト(人工衛星)は、通信、地球の高層大気の環境モニタリングに使用されることが多い。

研究チーは、ガラスセラミック材料を使ってRPAsを開発した。これは、シリコンや薄膜コーティングのような従来のセンサ材料よりも耐久性が高い。プラスチックで3Dプリンティング(AM)するために開発された製造プロセスにガラス-セラミックを利用することで、複雑な形状のセンサを作ることができる。これは、サテライトが地球の低軌道で直面する広い温度スイングに耐えることができる。

「AMは、宇宙ハードウエアの未来に大きな差を生み出す。何かを3Dプリントすると、パフォーマンス低下に譲歩しなければならないと考える人もいる。しかし、それは常に正しくないことをわれわれは示した」とMITマイクロシステム研究所(MTL)、論文のシニアオーサ、Luis Fernando Velásquez-Garcíaは、話している。

多用途センサ
RPAは、1959年に宇宙ミッションで初めて使用された。センサは、プラズマに浮いているイオンのエネルギー、荷電粒子を検出した。これは、地球の高大気に存在する分子の加熱混合物。CubeSatsのような軌道上の宇宙船に搭載した多目的機器は、エネルギーを計測し、化学分析を行う。これが、天候の予測、気候の変化をモニタする研究者に役立つ。

センサは、微小な孔の点在する一連の荷電粒子メッシュを含んでいる。プラズマが、その孔を透過すると、電子と他の粒子が剥ぎ取られ、最終的にイオンだけが残る。これらのイオンが電流を生成し、センサがそれを計測、分析する。

RPAの成功のカギは、メッシュを配列したハウジング構造である。それ電気的に絶縁されなければならない。同時に、突然の劇的な温度スイングに耐えることができなければならない。研究チームは、これらの特性を示す、プリント可能なガラス-セラミック材料Vitroliteを利用した。

20世紀早期に開発されたVitroliteは、アールデコビルでよく見られるようになったカラータイルでよく使われた。

その耐久性のある材料は、壊れることなく800℃の高温にも耐えられる。それに対して、半導体RPAsで使われているポリマは、400℃で溶け始める。

「このセンサをクリーンルームで作るとき、材料や構造、それらがどのように相互作用するかを判断する同じ自由度がない。これを可能にしたものは、AMにおける最新の開発である」(Velásquez-García)。

製造を再考
セラミックの3Dプリンティングプロセスは、一般にセラミック粉末を必要とする。それにレーザを照射して溶融し、形を作るが、このプロセスでは、材料が粗くなることがよくあり、レーザからの高熱により弱点ができる。

そうしないでMITの研究者は、液槽光重合法を利用した。これは、数10年前にポリマ、つまりレジンによるAM用に導入されたプロセス。液槽光重合法により3D構造は一度に一層ずつ、それを繰り返し液体材料のバットに沈めることにより構築される。この場合は、Vitrolite。各層が追加された後、UV光を使って、その材料を硬化する。各層は、わずか100µm厚(ヒトの髪の毛の径程度)、滑らかな、無孔性、複雑なセラミック形状が可能になる。

デジタル製造では、デザインファイルに記録された物体を、非常に複雑にすることが可能。この精度により、研究者は、RPAハウジング内部に収まる時に孔が完全に並ぶように、独自の形状を持つレーザカットメッシュを作ることができた。これにより、より多くのイオンが透過し、一段と高い分解能計測が可能になる。

センサは、安価に、迅速に製造できるので、チームは4つの独自のデザインプロトタイプを作った。

1つのデザインは、サテライトが軌道で遭遇するような、幅広い範囲のプラズマのキャプチャと計測で特に効果的だった。もう1つは、非常に高密度、低温プラズマのセンシングに最適だった。これは、一般に、超高精度半導体デバイスを使って計測できるだけである。

この高精度は、Velásquez-Garcíaによると、核融合エネルギー研究、あるいは超音速飛行のアプリケーション向けの3Dプリントセンサを可能にする。迅速プロトタイピングプロセスは、サテライトや宇宙船設計でなお一層の革新を促進できる。

「革新を達成したいなら、失敗してリスクを負う必要がある。AMは、宇宙ハードウエア作製のかなり違った方法である。宇宙ハードウエアを作ることができるが、失敗しても、構わない。新しいバージョンを素早く、安価に作ることができるからである。実際、デザインでも反復する。研究者にとっは理想的なサンドボックスであある」と同氏はコメントしている。

(詳細は、https://news.mit.edu)