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無人自動車向けLiDARに役立つ新しいレーザ

August, 10, 2022, Lausanne--EPFLとパデュー大学(Purdue University)の国際協働チームは、ハイブリッド集積レーザを開発した。これは、自動車産業向け次世代LiDARに役立つ可能性がある。

レーザ生み出すイノベーションの可能性は、誇張ではない。どんな新しい技術もコヒレントレーザ光源ほど普及しているものはない。しかし、レーザの技術と原理は、過去50年ほとんど変わっていない、商用利用のレーザの大半は、まだレガシー技術スキームに基づいている。同時に、フォトニクスの技術基盤は、、過去10年で根本的に変わった。すでに産業的成熟期に達したSiNなどのフォトニック集積プラットフォームの登場によるものである。

フォトニック集積によってわれわれは、前例のない拡張性を備えたコンパクトなシステムを構築できる。しかしこれまでのところ、狭線幅レーザ光源の小型化は課題になっている。集積レーザは、10年以上も研究されているが、最先端のファイバレーザと同等の位相ノイズパフォーマンスは達成できていない。

どんなレーザ光源にも競合する要件は、周波数アジリティの同時達成である、つまりレーザ周波数の高速作動である。狭線幅レーザ光源の周波数アジリティは、周波数計測における多くのアプリケーションで決め手になる。また、三角チャープ信号の生成、周波数変調連続波(FMCW LiDAR)測距など。FMCW LiDARは、長距離LiDARに関連する最も切望されている技術の1つである。

今日までのところ、最も安定したレーザは、高速レーザチューニングができず、ウエファスケール製造に適合していない。これは、量産市場に対処するアプリケーションの重要な要求である。狭線幅と周波数アジリティの両方を達成することは、未解決の課題であり、バルクレーザでも、どんな集積プラットフォームでも今日まで達成されていない。

今回の、EPFL とPurdue大学の協働が、ハイブリッド集積チューナブルレーザの領域で著しい進歩を達成した。グループは、超低ノイズと高速チューニング速度を同時に特徴とするコンパクトなレーザを実証できた。研究成果は、Natrue Communicationsに発表された。これは、大幅に製造コストを下げ、光測距向けの新しいレーザ光源を可能にしている。それは、ファイバレーザとダイオードレーザの長く続いたトレードオフを一掃し、ウエファスケール製造に適合する汎用的なソリューションを提供することができる。

確立されたMEMS処理の製造(Purdue)とEPFLマイクロナノテクノロジーセンタ(CMi)で製造したSiNベースフォトニック回路を統合することで、研究チームは、初めてファイバレーザに匹敵する低位相ノイズ、同時に前例のない高速チューニングを達成できた。チームのアプローチは、レーザ自己注入ロック技術に基づくもので、これによりフリーランニングレーザ線幅は、少なくとも4桁低減される。

その全潜在力を説明するために研究チームは、そのレーザを使って光測距実験を行った。コヒレントレーザ測距は、主要な商用関心が集まっている次世代LiDAR技術である。しかし、線形性とスピードのチューニングの厳しい要件を満たした集積レーザ光源はこれまで存在しなかった。チームは、ラボ環境で、12㎝の距離分解能、100kHzチューニング速度で素晴らしいコヒレントFMCW LiDARを実証した、これによりレーザから10m離れたシーンを再現したのである。

「成果で注目に値する点は、そのレーザが複雑な線形法を付加することなく光測距が可能な点である」とEPFL基礎科学、物理学教授、Tobias J. Kippenbergは説明している。

研究成果は、集積フォトニクスの注目に値する例である、コンパクトなウエファスケール製法だけでなく、何十年もかけて開発、最適化、完成された従来のバルクレーザでは達成できない性能指標をも達成している。それは、ハイブリッド超低損失集積フォトニクスが、次世代LiDARや長距離コヒレント通信向けに、コンパクトな超狭線幅レーザ開発でもつ途方もない可能性を強調している。
(詳細は、https://actu.epfl.ch)