Science/Research 詳細

クモの糸を光ファイバに変えることでバイオセンサを作製

August, 9, 2022, Taipei--台湾の研究者は、クモのシルクの導光特性を利用して、生体液屈折率の小さな変化を検出、計測できるセンサを開発した。これにはグルコースや他のタイプの糖溶液が含まれる。新しい光ベースセンサは、いずれ、血糖や他の生体分析物の計測に役立つようになる。

国立陽明交通大学、研究チームリーダー、Cheng-Yang Liuは、「グルコースセンサは、糖尿病の患者には極めて重要であるが、これらのデバイスは侵襲的、不快になりがちで、コスト効率がよくない」とコメントしている。「クモのシルクは、その優れたオプトメカニカル特性が注目を集め、われわれは、この生体適合材料を使って様々な糖濃度をリアルタイムに光学的検出できるようにしたかった」と話している。

台湾機器研究所、台北医科大学の研究者は、Biomecical Optics Expressに新しいセンサを発表した。研究チームは、それが溶液の屈折率変化に基づいてフルクトース、サッカロースおよびグルコース糖の濃度判定に使えることを示した。クモのシルクは、光ファイバのように光を透過するとともに、非常に強く、弾性があるので、このアプリケーションに最適である。

「われわれの新しいクモシルクベースファイバオプティク糖センサは、実用的でコンパクト、生体適合、コスト効果が優れており、高感度である。さらなる開発により、家庭内の医療モニタリングデバイス、POC診断およびテストデバイスに最適になる」(Liu)。

シルクからセンサ
そのセンサを作るために研究チームは、台湾原産、巨大女郎蜘蛛のクモのシルクを利用した。チームは、わずか10µm径のシルクを生体適合光硬化レジンで包み、それを硬化させて滑らかな保護面を形成した。これは、100µm径の光ファイバ構造となった。クモのシルクがコアとして、レジンがクラッドとして機能する。次にチームは、金の生体適合ナノ層を加えて、ファイバのセンシング能力を強化した。

このプロセスは、両端をもつ糸のような構造を形成した。計測用にそのファイバを使うためにチームは、片端を液体サンプルに浸し、他端を光源と分光計に接続した。これにより、チームは、溶液の屈折率を検出し、それを使って糖の種類とその濃度を判定することができた。

「クモシルクベースの糖センサは、再利用可能、コスト効果が優れており、使いやすく、リアルタム検出ができる。さらに、それはコンパクトであるので脳や心臓のような到達が困難な箇所にアクセスできる。さらに開発が進むと、このシルクベースのファイバオプティック糖センサは、インプラント可能医療機器、バイオメディカルアプリケーションで治療戦略に使える」(Liu)。

一貫性、正確な読取り
経時的にそのセンサの再現性と安定性をテストするためにチームは、それを使って室温で未知の濃度のフルクトース、サッカロース、グルコース糖の溶液を計測した。

シルクベースのファイバオプティクセンサの性能を定量的に確定するために研究チームは、センサが生成する光強度スペクトルと商用反射計で得た屈折率計測とを比較した。センサは、溶液の糖タイプを特定し、濃度を読み取ることができた。

「われわれが達成した計測の精度とセンシング感度は、そのセンサが未知の糖溶液の濃度を正確に推定できることを示唆している。さらに、われわれが提案したセンサのセンシング感度は、ヒトの血液にある糖濃度の範囲を完全に包含している」(Liu)。

そのセンサがクリニックや家庭用デバイスでリアルタイム計測に使えるようになる前に、長期利用のために、その精度を高め、変化する環境におけるその安定性を強化する必要がある。

研究チームは、POC読取りのためにモバイル機器でそのセンサが利用されるようなソフトウエアの開発にも取り組んでいる。チームは、ヒトの血液でラクトースや脂肪など様々な生体成分の計測使えるようにセンサの機能拡張も考えている。