Science/Research 詳細

コロンビア大、メラノーマ脳転移に新たな洞察

July, 27, 2022, Irving--脳転移は、ガン関連死の最も一般的な原因の1つであり、進行性メラノーマ患者では頻繁に起こる。新しい免疫療法は、メラノーマ脳転移の一部の患者には効果的である。メラノーマが脳へ広がる理由、多くの治療に対する反応が低いことについてはほとんど分かっていない。

コロンビアの研究者は、メラノーマ脳転移内の細胞の最も包括的な研究の1つを完了し、新しい世代の治療開発を促進できる細部を明らかにした。

「脳転移は、メラノーマ患者には極めて一般的であるが、その基本的な生物学については初歩的な理解しかない。われわれの研究により、これら腫瘍のゲノミクス、免疫学、空間構成についての新たな洞察が得られ、さらなる発見と治療探求の基盤として役立てることができる」と研究チームリーダー、Benjamin Izar MD. PhDは、コメントしている。同氏は、コロンビア大学内科医および外科医のVagelos Collegeの医学准教授。研究成果は、Celに発表された。

革新的方法によりさらに深い分析
 メラノーマ脳転移が最新の治療を逃れる理由の理解を開始するために、研究チームは、凍結脳サンプルの単細胞遺伝学的解析を行うための新技術を開発する必要があった。

「そのような研究は、一般に新鮮な脳サンプルで実施される。この供給は不足しており、解析できる腫瘍数が極端に制限されている。それに対して、われわれは、われわれの組織バンクで多くの凍結メラノーマサンプルを持っている」(Izar)。

「このイノベーションによりわれわれは、治療を受けなかった患者からの組織を分析することができた。つまりわれわれは、治療によって変更される前に、腫瘍の生物学とその微小環境を見ることができる」(Izar)。

明らかにされた治療標的
数十のメラノーマ患者からの転移腫瘍によりチームは、10万以上の個別細胞で遺伝子発現を分析できた。

その分析は、メラノーマ脳転移では、身体の他の部分におけるメラノーマ転移と比べて染色体が不安定であることを明らかにした。

「染色体の不安定性は、大きな染色体断片の永続的ゲインとロスであり、このプロセスがシグナリング経路のトリガーとなって、細胞がより広がりやすくなり、身体の免疫系抑制を高める」とJohannes C. Melms, MD,は説明してている。同氏は研究の主筆の一人、Izarラボの分子ポスドクフェロー。

これらの経路は、重要な治療標的である。「染色体不安定性を抑制する複数の実験薬が、間もなくヒトでテストされる。これらの薬剤を脳にメラノーマ転移がある患者で評価するのは当然である」(Melms)。

免疫系から身を隠す
研究チームは、その細胞が患者の免疫系から身を隠すのに役立つ可能性のあるメラノーマ脳転移の2つの他の特性も発見した。チームは、その転移が、腫瘍微小環境で、ガンの成長を促進するように免疫細胞、特にマクロファージとT細胞を変えることを発見した。さらに、その細胞が脳内のニューロンのような状態を採り入れることを見い出した。

「これらの変化により、細胞がその新しい環境を受け容れ、生き残るのに役立つようになる可能性がある」とJana Biermannはコメントしている。同氏は研究の主筆の一人、Izarラボのコンピュータポスドクフェロー。

初の空間的分析
最終的にチームは、脳転移のメラノーマを初めて空間的に分析することができた。CTスキャンが3D画像を作成するのとほとんど同じように多数の腫瘍スライスを分析し、つなぎ合わせることができた。

「1つの腫瘍から次、さらに所与の腫瘍にまで、代謝と免疫経路に関して非常に多くの地理的多様性があることが分かった。空間的多様性の考え方を理解し始めたばかりであるが、これが、新たな治療への完全な腫瘍反応の機会を増やすカギとなることは明らかである」とIzarは話している。

(詳細は、https://www.cuimc.columbia.edu)