July, 14, 2022, 東京--東京大学物性研究所の木村隆志准教授(兼 理化学研究所 放射光科学研究センター 客員研究員)、竹尾陽子助教(兼 高輝度光科学研究センター ビームライン技術推進室、兼 理化学研究所 放射光科学研究センター 客員研究員)らの研究グループは、ウォルターミラーを導入した新たな軟X線顕微鏡の開発に成功し、哺乳類細胞の内部微細構造をさまざまな波長の軟X線で捉えることに成功した。
可視光と比較して波長の二桁以上短い光を利用する軟X線顕微鏡では、元素や化学結合の分布などの情報を、内部構造も含めて詳細に調べることが可能。しかしこれまでの軟X線顕微鏡は、波長に応じて集光位置が変わる色収差や、光学素子の作製精度の影響を受けて分解能が悪化するといった問題が存在していた。
研究グループは今回、軟X線の全反射現象を利用するウォルターミラーを組み込んだ新たな軟X線顕微鏡を開発し、さらにタイコグラフィ法と呼ばれる計算機を活用したイメージング技術を組み合わせることで、波長によらず50 nmの分解能で細胞内部の微細構造を観察可能なことを示した。
軟X線は電子顕微鏡などと比べて透過力も高く、こうした成果は動作環境下でのデバイスの物性分析や生細胞のその場観察など、幅広い分野で大きな力を発揮するものと期待される。
研究成果は、米国の学術雑誌「Optics Express」に2022年7月18日(現地時間)掲載される。
(詳細は、https://www.issp.u-tokyo.ac.jp)