June, 16, 2022, 京都--京都大学電子工学専攻の竹内繁樹 教授、岡本亮 同准教授、向井佑 同特定助教らの研究グループは、赤外分光計測による物質の鑑別に重要な「指紋領域」と呼ばれる波長域に含まれる、波長8μm~10.5μmでの量子赤外分光に世界で初めて成功した。
今後、さまざまな物質の鑑別同定が、スマートフォンのカメラなどにも利用されているシリコン光検出器を用いた、小型で高性能な量子赤外分光装置により可能となり、医療やセキュリティ、環境モニタリングなどで活用されることが期待される。
今回研究グループは、波長 5μm を超えても透明である非線形結晶の、「硫化銀ガリウム(AgGaS2)」に着目し、量子もつれ光子対生成のための適切な条件を見出した。その結果、指紋領域に含まれる、波長 6~12µm の赤外光子と、シリコン光検出器で検出可能な波長 1.1μm 以下の可視・近赤外域(Visible and NearInfraRed: VNIR)の光子の対を発生する、量子もつれ光源を実現した。さらに、その量子もつれ光源を用いて、指紋領域(波長 8~10.5 µm)での量子赤外分光に世界で初めて成功した。
研究成果は、2022年6月7日(現地時刻)に米国の国際学術誌「Optics Express」にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.t.kyoto-u.ac.jp)