June, 16, 2022, 東京--東京大学大学院工学系研究科と株式会社大林組は共同で、福島ロボットテストフィールドにて、自律4足歩行ロボットとUAVを用いたトンネル断面3次元計測の実証実験を実施し、複数の断面計測を連続的かつ効率的に実施できることを確認した。
この実証実験は、国土交通省「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の一環で行った。
ロボットには、15㎝以下の凸凹した不陸(ふりく)や轍(わだち)、ぬかるみや砕石上を問題なく移動できる自律4足歩行ロボット「Spot(Boston Dynamics社)」と、測量業務で幅広く使われ、カメラや計測機器などアタッチメントの改良が比較的容易なUAV「MATRICE 300 RTK(DJI社)」を採用。積載重量制限や寸法制限を考慮し、それぞれの装置に適したリングレーザと広視野カメラを選定した。また、それらを固定する部材は、3Dプリンタで製作した樹脂製のものを使用して、軽量化を図った。
光切断法を用いた3D計測システムをロボットに搭載したことによる効果
(1)複数断面の3次元計測が容易に
1断面の計測は、リングレーザのスイッチがONとOFFの状態で写真をそれぞれ1枚撮影し、背景差分法によってレーザ照射点のみを画像から自動抽出後、3次元座標(点群)を計算する。従来、複数断面の計測を行う場合は、リングレーザの照射位置を移動させる必要があった。この実証実験では、地上を自律歩行する「Spot」と空中を飛行するUAVに計測装置を搭載し、レーザのスイッチの切り替えを高速で繰り返し動画撮影することで、複数断面を連続的に計測できることを確認した。ロボットを活用することにより、計測に要する時間は従来の約30分の1に短縮できた。
(2)さまざまな場所、複雑な形状の3次元計測が可能
このシステムでは、カメラの画角に収まったレーザ照射点の3次元座標を画像から計算し、取得することができる。三脚のように地上据え付け式の場合は、レーザを照射して写真撮影できる高さに限りがあるため、ダムの利水放流トンネルや橋梁下面などの高所への適用が制限されたが、UAVを使用することで高所での計測が可能。
「Spot」は、背中の角度や高さを調整できるため、さまざまな角度でレーザ照射が可能。また、トンネルの掘削作業時の切羽付近は、天端(てんば)からの湧水や建設機械・車両の往来によりぬかるみや轍が発生することがあるが、「Spot」はそのような悪路にも対応できるため、掘削出来形の計測にも適用できる。
(3)自律歩行による自動計測が可能
「Spot」には複数のカメラが内蔵されており、これらのカメラはARマーカを認識できる。事前にARマーカを認識させ移動経路を設定すると、二回目以降は自律歩行することができる。この機能により、トンネルや地下通路を任意の時刻に自動で動画撮影しながら断面の計測ができるため、竣工検査時の初期点検や定期的な日常点検などにも有効。
(詳細は、https://www.t.u-tokyo.ac.jp)