May, 12, 2022, Ottawa--オタワ大学(University of Ottawa)の研究者は、液晶を使って初めてフラットなマジックウインドウを作製した。これは、光を照射すると、隠された画像を生成する透明デバイス。その技術は、古来の光学的仕掛けの新たな工夫である。
数千年前、中国や日本の職人が、ブロンズミラーを作製した。これらは、1つの反射を見るとフラットなミラーに見えるが、太陽光が直接当たると別の画像を形成する。これらデバイスの機能を研究者が理解できたのは20世紀初めだった。ミラー背後に入った画像が小さな表面の変化を作り出し、画像を形成する。最近になって初めてエンジニアは、ハイテクディスプレイのために同じ原理を液晶に適用した。
「われわれが作製したマジックウインドウは、裸眼には平坦に見えるが、実際は、わずかな変化があり、そのために光に反応して画像が生成される。比較的滑らかになるようにウインドウを設計することにより、作られる画像は、ウインドウから広い範囲の距離で見ることができる」とオタワ大学のFelix Hufnagelは、説明している。
Optica発表の論文で研究チームは、いかなる所望の画像でも生成できる透明な液晶マジックウインドウ作製のために開発したプロセスを説明している。そのプロセスは、透過よりも光を反射して画像を創るマジックミラーを実現するためにも利用できる。
「マジックウインドウあるいはミラーを作るために液晶を使うことで、いずれダイナミックな芸術的ウインドウ、ムービーを作るための構成可能なバージョンの実現が可能になる。長い焦点深度が可能になると、そのアプローチは、様々な距離から見ても安定した3D画像を生成するデイスプレイに使える」(Hufnagel)。
液晶でマジックを作る
古代のブロンズマジックミラーが小さな表面変動の結果として画像を形成することは何十年も前に分かっていたが、2005年になって初めてUKのブリストル大学の数学物理学者、Michael berryが、この効果の数学的基礎を導いた。同氏は後に、この知識を敷衍して、反射マジックミラーに加えて、透明マジックウインドウの理論的基礎を開発した。Hufnagelは、これに触発されて、液晶ベースのマジックウインドウを作製した。
液晶は、従来の液体のように流れる材料であるが、固体結晶のように方向付けられる分子を持つ。新しい研究ではチームは、照射されると所望の画像を生成できる特殊な液晶パタンを作ることでよく知られた製造プロセスの改良バージョンを使用した。
研究チームが利用したのはPancharatnam-Berry Optical Element (PBOE)。これは、Pancharatnam-Berry位相という周知の原理で動作する液晶デバイス。このデバイスの液晶分子の方向を変えることで研究チームは、ピクセル毎に光がデバイスを進むにつれて光の特性を変えることができた。
マルチディスタンスで安定した画像
「概念レベルでは、Berryが開発した理論は、広い範囲の距離で安定した画像を作るためにこれらの液晶が、どのうように方向付けられるべきかを決める手段となった。フラットな光学素子とBerryのLaplacian画像理論による処方のなだらかな変動の液晶パタンをわれわれが使うことでマジックウインドウは、それを通して見ても、正常、つまりフラットに見える」(Hufnagel)。
マジックミラーやウインドウを作製した後、チームはカメラを使って、両方のデバイスで作られた光強度パタンを計測した。レーザビームで照射されると、両方のミラーとウインドウは可視画像を生成した。これは、カメラとミラーあるいはウインドウ間の距離が変わっても安定したままであった。チームは、LED光源で照射されるとそのデバイスが画像を生成することを示した。これは、実際のアプリケーションに使うとより実用的になる。
研究チームは現在、その製造アプローチを使って量子マジックプレートを作ろうとしている。例えば、これらのプレートの2つがエンタングルした画像を作ることができる。これを使って新しい量子イメージングプロトコルを研究することができる。チームは、液晶以外のアプローチを使ってマジックウインドウ作製の可能性も探求している。例えば、誘電体メタサーフェスを使ってマジックウインドウデバイスを作ると、帯域を増やしながらフットプリントを小さくすることができる。