May, 10, 2022, Stuttgart--シュトゥットガルト大学(University of Stuttgart)の研究者は、3Dプリントされたマルチレンズシステム、直径600µmにARコーティングを適用する新しい方法を開発した。これらのコーティングは、反射による光損失の最小化に役立つので、マルチマイクロレンズ構成の高品質3Dプリントシステム実現に極めて重要である。
同大学の研究チームリーダー、Harald Giessenは、「われわれの新しい方法は、マルチレンズを使用する3Dプリントされた複雑などんな光学系にもメリットがある。しかし、それは特に微小ファイバ内視鏡などのアプリケーションに有用である。これは、高品質オプティクスを必要としており、理想的な照明条件以下のイメージングで使用される」と説明している。
カメラで使用される大型レンズは、それらがデバイスにアセンブルされる前にコーティングされる。しかし、幅1㎜以下の3Dプリントレンズでは、スパッタリングなどの従来のコーティング技術は、使えない。これは、レンズ系全体が、一般に単工程で製造されており、中空開口部やアンダーカットに届かないからである。
Optical Materials Expressで、研究チームは、3Dプリントされたポリマ材料に適合する低温原子層堆積(ALD)を説明している。それは、例え構造に中空部やアンダーカットがあっても、複雑なシステムの全レンズ面を同時コーティングするために使える。新しいアプローチは、色フィルタなど他の薄膜システムを直接3Dプリントマイクロオプティクス製造に使える。
「われわれは、3Dプリントされた複雑なマイクロオプティクス向け反射防止コーティング作製に初めてALDを適用した。このアプローチは、新たな診断法、恐らく処置を可能にする新しい種類の極薄内視鏡デバイス作製に利用できる。また、自動運転向けの微小センサシステムの作製にも使用できる。これらは、ゴーグルAR/VR向けの高品質微小オプティクス作製にも使える。
反射の除去
光学系では、微量の光がレンズと反射により空気の界面で失われる。システムが多数のレンズを組み合わせていると、これらの損失が累積するので、反射防止コーティングは必須になる。反射は、レンズ系の画像品質も低減する。
「われわれは、数年にわたり3Dプリントされたマイクロオプティクスに取り組んでおり、常に製造プロセスの改善と最適化に努めている。複雑なレンズ系のイメージング品質改善のためにわれわれの光学系にARコーティングをすることは論理的な次のステップだった」とGiessenは説明している。
ALDを使用してARコーティングできるが、一般に高温が必要になる。これは、複雑な微小光学系を3Dプリントするために使われた材料を溶かす。3Dプリントされたレンズは、一般に、200℃程度までは安定している。したがってチームは、150℃で機能するALDプロセスを開発した。
ALDの間、3Dプリントされたレンズ系は、ARコーティングの分子成分を含むガスに晒される。ガス分子は、3Dプリントされた構造の中空部を自由に動き回り、全ての露出レンズ表面に均一な薄膜を形成できる。連続層を付加し、先駆体ガスを変えることで、厚さと材料特性を調整して、一連の高屈折率と低屈折率コーティング、あるいは他のARコーティング設計を形成できる。
コーティングの評価
研究チームは、3Dプリントされたサンプルで開発したALDコーティングの特性を評価し、そのコーティングが平坦基板のブロードバンド反射率を可視光波長で1%以下に下げたことを確認した。また、3Dプリントされたわずか600µm幅のダブルレンズイメージングシステムでもALDコーティング技術をテストした。
「ダブルレンズ系のプリントには、3Dプリントされたレンズの前例のない平坦性を可能にするNanoscribe Quantum Xマイクロファブリケーションシステムを利用した。われわれのALDコーティングが、反射率を著しく下げ、逆にこのマルチレンズ系で透過性を強化することを示した」とRistokは、コメントしている。
研究チームは、そのALDアプローチを使って、さらに層数の多い先進的コーティングデザインを作製する計画である。これは、特殊波長で、一段と反射損失を下げることができる。研究チームによると、マイクロオプティクスの3Dプリンティング、ARコーティングのALD堆積の両方が、急速プロトタイピンに、また少量生産に最適である。また、プロセスタイムの削減は、両方のアプローチを大規模生産にも最適にすると、チームは考えている。