May, 6, 2022, 東京--カイラルエッジ状態と呼ばれる特殊な光状態を活用することで、一方向のみに光を伝送するトポロジカル光導波路を実現できることが知られている。この導波路は、作製時に生じる構造ゆらぎや欠陥などがあっても散乱や反射なく光を伝送できることから、光配線などに利用される光集積回路の高密度化、高機能化を可能にすると期待されている。しかし、このカイラルエッジ状態を活用したトポロジカル光導波路を、光集積回路の主な動作波長である光通信波長域において広い波長範囲で機能させることは難しいと考えられてきた。
東京大学 先端科学技術研究センターの刘天際 特任助教(研究当時)、岩本 敏 教授、慶應義塾大学の太田泰友 准教授および電磁材料研究所の小林伸聖 主席研究員、池田賢司 主任研究員らの研究グループは、誘電率がゼロに近い値を示すENZと呼ばれる特性を持つ磁気光学材料(磁気光学効果を示す材料)を含むフォトニック結晶の構造に注目し、数値解析を行った。その結果、ENZ特性を持つ磁気光学材料を用いることにより、過去の報告の1000倍以上の広い波長帯域で動作可能な広帯域トポロジカル導波路の実現が可能であることを明らかにした。
この成果は、従来技術では実現が困難であった一方向性導波路など、トポロジーを活用した光集積デバイスの可能性を開くものであり、集積光回路技術に基づくさまざまな応用において、その高効率化、高機能化に貢献することが期待される。
研究成果は、ACS Photonicsオンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.keio.ac.jp/)