April, 28, 2022, 京都--京都大学、武田和行 理学研究科准教授と冨永雄介 同博士課程学生(現:同特定研究員)の研究チームは、ハイブリッド量子技術を用いた核磁気共鳴法(Nuclear Magnetic Resonance; NMR)の光検出器を小型化し、超伝導磁場中でNMR測定を行うことに成功した。
現代の化学分析や医療においてNMRは不可欠な手法であるが、原理的に感度が低く、NMR信号検出における雑音を減らすことは今もなお重要な課題である。ここ数年、Electro-Mechano-Optical(EMO)NMRという、ハイブリッド量子技術を応用した検出方法による雑音の低減が期待されている。EMO NMRではNMR信号の受信回路に薄膜が組み込まれており、微弱なNMR信号によって振動するようになっている。その微小な振動をレーザ光の干渉によって低雑音にとらえる。しかし、安定な光学系を組むためには、大掛かりな光学定盤の上にシステムを構築するのが普通で、化学分析で用いるようなNMR装置がそなえる超伝導磁石に設置できるようなものは存在しなかった。
研究チームは、超伝導磁石の限られた内部スペースにぴったり収まる小型EMO NMR装置を設計・作製し、超伝導磁石内でベンゼンの炭素13のNMR信号を取得することに成功した。信号の取得には、二種類の原子核を揺さぶることで磁化を移し信号強度を補う、化学分析で広く用いられている手法も取り入れられた。
この研究により、これまでは主として物理学的な観点から研究が行われてきたEMO NMRであるが、化学分析手法としての利用への道が開かれたと言える。
研究成果は、2022年3月23日にAnalyst誌に掲載され、Analyst HOT Articles 2022に選ばれた。
(詳細は、https://www.kyoto-u.ac.jp)