April, 26, 2022, Graz--グラーツ大学の研究チームは、染色やラベルなしで光の回折限界よりも小さなナノ構造を明らかにすることができる新しい計測、イメージングアプローチを開発した。研究成果は、新しい強力な顕微鏡法への重要な前進であり、従来の顕微鏡や技術で可能な範囲を超えて複雑なサンプルの微細な特徴を見るために、いずれ利用できるようになる。
Opticaに発表された新しい方法は、レーザスキャニング顕微鏡の改良である。これは、強く集束されたレーザビームを使ってサンプルを照射する。研究チームは、調べているサンプルと光が相互作用した後の光の輝度、強度を計測すると共に、光照射野にエンコードされた他のパラメタを検出することで、その技術を詳しく説明している。
「われわれのアプローチは、様々なサンプルのナノ構造の研究に使われる顕微鏡ツールボックスの拡張に役立つ」とグラーツ大学研究チームリーダー、Peter Banzerは、コメントしている。「同様のスキャニングベース超分解能技術と比較して、われわれの方法は、完全非侵襲的であり、イメージング前に試料に注入されるいかなる蛍光分子も必要としてない」。
研究チームは、多数の粒子が触れていても、金のナノ粒子の位置とサイズを数ナノメートルの正確さで計測できることを示している。
「レーザスキャニング顕微鏡へのわれわれの新しいアプローチは、分解能が限られた従来の顕微鏡と、調べる試料の変更を必要とする超分解能技術とのギャップを近づけることができる」(Banzer)。
光からより多くのものを捉える
レーザスキャニング顕微鏡では光ビームは、サンプルをスキャンし、サンプルからの伝達、反射あるいは散乱光が計測される。ほとんどの顕微鏡法は、サンプルから来る光の強度、つまり輝度を計測するが、光の他の特性には膨大な情報が蓄積されている。位相、偏光、散乱角度などである。この追加情報を捉えるためにチームは、強度と偏光情報の空間分解能を調べた。
「光の位相と偏光は、それが相互作用するサンプルについての微細部を含むように、その強度と共に、空間的に変化する。つまり、物体の影が物体自体の形状について何かを伝えるかのようである。しかし、相互作用の後に、光パワー全体のみが計測されるなら、この情報の多くは無視されている」(Banzer)。
チームは、様々なサイズの金属ナノ粒子を含む簡単なサンプルを調べるためにそれを使うことで、その新しいアプローチを実証した。関心のある領域をスキャニングし、次に伝達され光の偏光と角度分解画像を記録する。計測されたデータは、粒子モデルを作るアルゴリズムを使って評価された。粒子モデルは、可能な限り精密な計測データに類似するように自動的に適用するものである。
「粒子やその距離は、多くの顕微鏡の解像限界よりも遙かに小さいが、われわれの方法は、それらを分解できた。さらに、もっと重要な点は、アルゴリズムが、サンプルについての他のパラメタ、粒子の正確なサイズ、位置などを提供できる点である」。
チームは現在、より複雑なサンプルでそれが使えるようにその方法を適用することに取り組んでいる。アプローチの機能は、サンプルと相互作用する光の構造を調整、AIベースのアプローチを画像処理段に組み込むことで拡張も可能である。検出側では、チームは他の専門家と協力して、ヨーロッパプロジェクト、SuperPixelsの一貫として特別なカメラを開発しているところである。この次世代検出デバイスは、強度に加えて偏光と位相情報を分解することができる。
「われわれの研究は、光構造がオプティクスや光ベース技術の領域で極めて重要な役割を担っていることのさらなる証明である。多くの素晴らしいアプリケーションや現象がすでに実証されているが、今後、さらに出てくる」とBanzerは話している。