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エネルギー分解型光モニターを開発

April, 26, 2022, 和光--高輝度光科学研究センター(JASRI)ビームライン技術推進室の工藤統吾主幹研究員らのグループは、従来観測できなかった太陽光の一億倍にも達する高輝度光ビームの中心を非破壊で観察する方法の開発に成功した。

この方法は、将来計画されている回折限界シンクロトロン放射光リングで求められる超高輝度光の精密な計測の実現につながり、放射光を利用した数多くの科学技術全体を前進させる大きな一歩となることが期待される。

タンパク質のX線構造解析をはじめとする基礎科学のみならず産業界においても無数の成果を生み出し続けるシンクロトロン放射光の歴史的な未解決課題として、光源であるアンジュレータから出る光ビームの中心位置の直接的な計測法の開発が待望されていた。
 アンジュレータ光は種々の波長の光を含む準白色であり、リング加速器特有の偏向電磁石の放射との識別の困難さもある上に、超高輝度であるが故の熱負荷の問題から、それらのモニタリングは長年の放射光技術の難問だった。今回、研究グループはこの難問に、従来に無い新しい方法で決着をつけた。

研究グループは、大型放射光施設SPring-8 BL05XUの光学ハッチ最上流の真空チャンバー内に単結晶ダイヤモンド薄膜を設置して、アンジュレータ光を透過させた。透過点からの散乱X線をピンホールカメラと2次元検出器による分光イメージング技術を用いて解析すると、これまで観察されたことがなかったアンジュレータ光のエネルギーごとの空間分布が可視化できることが分かった。これは、従来の主流であった複数の金属ブレードなどを用いる方法の弱点を克服し、真の光ビーム中心の観測に初めて成功したものである。

研究は、最先端のX線光子検出技術である2次元検出器のエネルギー分解能を用いた分光イメージングを初めてビーム計測に応用したものである。今後、放射光の性能を格段に上げる鍵となる技術として世界各国で採用されることが期待される。
今回の研究成果は、国際科学雑誌、「Journal of Synchrotron Radiation」に5月1日(オンライン版は4月20日)に掲載された。

研究グループ
高輝度光科学研究センター(JASRI)ビームライン技術推進室の工藤統吾主幹研究員、佐野睦主幹研究員、糸賀俊朗主幹研究員、後藤俊治コーディネーター、情報技術推進室の松本崇博主幹研究員、理化学研究所放射光科学研究センター先端放射光施設開発研究部門の高橋直上級技師

(詳細は、http://www.spring8.or.jp)