April, 8, 2022, 東京--東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の清水亮太准教授、小松遊矢 大学院生(博士後期課程2年)らの共同研究グループ※は、イットリウム・酸素・水素の化合物(YOxHy)の結晶方位を揃えたエピタキシャル薄膜を世界で初めて作製し、光照射と加熱によって絶縁体と金属の繰り返し変化に成功した。
光センサや光メモリなどの光エレクトロニクス応用に向けて、光照射により電気的物性が大きく変化する物質の開発が望まれている。しかし、電気抵抗が温度下降に伴い増加する「絶縁体・半導体」から、温度下降に伴い減少する「金属」への変化を、光照射によって達成した報告はなかった。
研究では、絶縁体であるYOxHyエピタキシャル薄膜に光を照射することでその電気抵抗が大幅に減少した「金属」状態を発現させ、当該金属状態を数日スケールで保持することに成功した。従来のガラス基板上の多結晶体のYOxHyでは、太陽光照射により電気抵抗が1桁程度減少するが、エピタキシャル薄膜化により3桁以上の減少を達成した。さらに、エピタキシャル薄膜に紫外レーザ光を照射すると電気抵抗は7桁以上も減少し、絶縁体からの金属化を実現した。この結果を説明するために、局所構造・化学組成の高分解能計測から構造モデルを構築し、これを基に電子状態を計算した結果、薄膜内の水素が光応答して余剰電子が生じ金属化に至る微視的機構を明らかにした。
この研究成果を活用することで、高性能な光メモリ・スマートウィンドウ等のデバイス応用につながる。また、薄膜内水素の密度・結合・荷電状態を高度に制御することで、さらなる光エレクトロニクスの進展が期待される。
研究成果は4月7日に、米国化学会誌「Chemistry of Materials(ケミストリーオブ マテリアルズ)」にArticleとしてオンライン掲載(オープンアクセス)された。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp)