January, 14, 2022, Jena--奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 物質創成科学領域の山形侑嗣(大学院生)、辨天宏明准教授、中村雅一教授らのグループは高分子太陽電池の作製時に用いる溶媒添加剤の働きをナノメートル(nm)のスケールで可視化することに世界で初めて成功した。
高分子太陽電池は、電子(マイナスの電荷)と正孔(プラスの電荷)をそれぞれ輸送する2種類の高分子(共役高分子)を溶かした液体を電極上に塗って膜状に固めるだけでできる。このため、製膜条件の最適化が発電性能向上の鍵となる。これまで、溶媒添加剤と呼ばれる溶媒(高沸点溶媒)を製膜溶液にごく少量加えることで発電性能が向上することが経験的に知られていたが、その仕組みは詳細に理解されていなかった。
研究グループは、ナノ空間の領域での電流-電圧特性を計測できる走査型プローブ顕微鏡(SPM)を駆使して、添加剤を加えて作製した太陽電池内を流れる光電流を可視化した。その結果、添加剤を加えた太陽電池内では、共役高分子でできた膜構造の秩序化が進み、生成した電荷を外部電極に効率よく輸送するネットワークがナノスケールで形成することを突き止めた。
この研究にて明らかになった溶媒添加剤の働きは高性能化の指導原理として高分子太陽電池の開発に広く応用可能であると期待できる。
研究成果は、ACS Applied Polymer Materials(DOI: 10.1021/acsapm.1c01173)にオンライン公開される予定。
(詳細は、http://www.naist.jp/pressrelease/files/20211222.pdf)