January, 12, 2022, 北九州/金沢--北九州市立大学 国際環境工学部の天野 史章 准教授と金沢大学 ナノ生命科学研究所の高橋康史特任教授らの共同研究グループは、電気化学イメージングに特化したプローブ顕微鏡を用いて、微細構造を持つ半導体光電極の電荷分離機構を明らかにした。
半導体光電極を使った水分解反応は、再生可能資源からの水素製造法として注目されており、TiO2ナノチューブは水分解に有効な半導体光電極として知られている。しかし、電荷分離により生じる電子や正孔に起因した反応を局所的に分析することの技術的な課題から、その効率的な電荷分離機構についての理解は得られていなかった。
研究グループは、走査型電気化学セル顕微鏡(SECOM)を使用してTiO2ナノチューブ電極の局所的な光電気化学特性を調べた。通常の光電気化学測定では電極全体の情報しか得られないのに対し、SECOMではナノピペットを利用して微小な液滴状の電気化学セルを形成し、水分解反応に由来する光電流を局所的に分析できる。光電流の高い領域と低い領域が存在する一方で、TiO2ナノチューブの上部と側面における局所的な光電流値に大きな差がないことが初めて分かった。この結果は、TiO2ナノチューブ光電極における電荷分離機構が直交型であることを実験的に示すものである。また、この電荷分離モデルは、PbO2(二酸化鉛)粒子の光電気化学的な析出反応によっても裏付けられた。
この研究成果により、さまざまなナノ構造半導体光電極の光電流特性を微細領域で理解できるようになったことから、材料設計の最適化が加速し、光電気化学的な手法を用いた水分解反応が高性能化することが期待できる。
研究成果は、ACS Catalysisオンライン版で公開された。
(詳細は、https://www.kitakyu-u.ac.jp/)