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集積フォトニクスと電子顕微鏡を結合

December, 28, 2021, Lausanne--スイスとドイツの研究者は、集積フォトニクス、チップ上で光をガイドする回路を使って効率的な電子-ビーム変調を実現した。実験は、電子顕微鏡における全く新しい量子計測につながる。

透過型電子顕微鏡(TEM)は、光の代わりに電子を利用して原子スケールで分子構造を撮像できる。また、これは材料科学や構造生物学を変革した。過去10年、電子顕微鏡と光励起の結合に大きな関心が見られた。例えば、光で電子ビームを制御、操作しようとしていた。しかし、大きな問題は、伝搬する電子とフォトンとの相互作用が弱いことであった。

新しい研究では、研究者は、集積フォトニックマイクロ共振器を利用して極めて効率的な電子ビーム変調の実証に成功した。この研究のリーダーは、EPFLのTobias J. Kippenberg、Max Planck Institute for Biophysical Chemistry、University of GöttingenのClaus Ropers教授、研究成果は、Natureに発表された。

両研究所は、型破りのコラボレーションで、通常は無関係な領域、電子顕微鏡と集積フォトニクスを結びつけた。フォトニクス集積回路(PIC)は、超低損失でチップ上の光をガイドし、マイクロリング共振器を使って光場を強化できる。Ropersグループの実施した実験で、電子ビームは、フォトニック回路の光接場により操作され、電子と強化された光との相互作用が可能になった。研究チームは、次に、数10~数100のフォトンエネルギーを吸収、または放出する電子のエネルギーを計測することで相互作用をプローブした。フォトニックチップは、Kippenbergのグループが設計し、マイクロリング共振器の光の速度が電子のスピードと正確に一致するように構築され、電子とフォトンの相互作用が飛躍的に増加した。

その技術により、光ビームの強力な変調が可能になる。普通のレーザポインタが生成するパワーレベル、連続波レーザからのはわすが数mWである。そのアプローチは、電子ビームの光制御を飛躍的に簡素化し、高率を高める。これは、通常にTEMにシームレスに実装でき、そのスキームの適用範囲は著しく広がる。

「低損失SiNベースの集積フォトニック回路は、著しく進歩し、多くの新興技術や基礎科学の進歩を強力に推し進めた。LiDAR、通信、量子コンピューティングなどである。また、今回、電子ビーム操作の新しい要素であることが判明した」(Kippenberg)。

「電子顕微鏡とフォトニクスを結びつけることは、原子スケールイメージングとコヒレント分光学を独自にブリッジすることを可能にする。将来的には、これは顕微鏡光励起の前例のない理解と制御を生み出すと期待している」(Ropers)。

研究チームは、新しい量子オプティクスや自由電子のアト秒計測という新しい形式の方向に提携を広げる計画である。

(詳細は、https://actu.epfl.ch)