August, 4, 2014, Greenelt--NASAの技術者は、電気駆動のマイクロシャッタアレイが現在の磁気駆動アレイと同じ機能を持つことを実証した。開発を担当しているのはNASAのGoddard Space Flight Center主席研究員、Harvey Moseley氏、Mary Li氏の研究チーム。
Li氏によると、全てのマクロ可動パーツ、特に大きな磁石を除去したことでこの技術は大きく進歩し、マイクロシャッタ駆動に必要な電圧を飛躍的に下げることができた。また、最先端の電子回路と製造技術を適用し、マイクロシャッタアレイが軌道で確実に信頼性のある操作ができるようにした。
Webb望遠鏡に搭載して飛ばすための最先端技術と見なされているマイクロシャッタアセンブリは、微小電気機械技術で造られ、1つ1つが人毛ほどの幅の数千の微小シャッタで構成されている。
4枚の切手サイズのグリッド、アレイにアセンブリされた25万個のシャッタのそれぞれが開閉し、目標としている対象からの光だけがWebbの近赤外スペクトログラフ(NIRSpec)に入るようにする。これは星のタイプやガスを特定に使え、それらの距離や動きの計測にも役立つ。Webbは、遠く離れたかすかな対象を観測するので、NIRSpecが十分なスペクトラムを得るのに必要な光を集めるのに一週間程度かかる。
しかしNIRSpecのマイクロシャッタアレイは装置の観察効率向上に寄与している。これによって研究者は、一度に100の対象についてデータを収集することができ、天文台の生産性が大幅に向上することになる。2018年にNASAがWebb望遠鏡を打ち上げたときには、これは初のマルチオブジェクト分光計となる。
マイクロシャッタ開発に当たって研究チームは、駆動用の磁石を排除した。全ての機械的パーツでは、磁石がスペースをとり、重量を増やし、機械的な故障を起こしがちである。さらに重要な点は、磁石が簡単には拡張できないことだ。したがって、装置の視野がサイズ的に限界づけられ、より大きな視野を必要とする次世代の宇宙天文台の大きな障害になる。
しかも磁石の動作は時間がかかる。Webb望遠鏡では、特定のシャッタ開閉のために電圧が選択的に印可される前、磁石はまずアレイ全体をスイープして全てのシャッタを開かなければならない。
将来の観測ニーズに適応するために、研究チームは磁石を静電アクチュエーションに置き換えた。マイクロシャッタの前面の電極に交流電圧を印可することでシャッタは開く。所望のシャッタをラッチするには、裏面の電極に直流電圧を印可する。言い換えと、必要なシャッタだけが開き、それ以外は閉じたままである。Li氏の説明によると、サイクルを減らしたことでマイクロシャッタの寿命は100倍伸びるはずだ。
アレイのサイズがもはや磁石に制約されないので、WebbのNIRSpecよりも50倍大きな視野を持つ装置に向けて一段と大きなアレイをアセンブリすることができる。駆動に必要な電圧は、2011年で80V、昨年にはわずか30Vを達成した。
また、シャッタが開いたときに固着しないように反スティクションコーティングを行った。コーティング前は3000サイクルのラボテストで、1/3のシャッタが固まった。コーティング後、27000サイクルのテストで、1つのシャッタも両サイドに固着しなかった、とLi氏は説明している。
進歩の結果、現在3人の天体物理学者がこの技術をミッションに適用することに関心を示している。
現在、この技術は大きなコンピュータ・スイッチボックスを使用しており、宇宙へのミッションには適していない。研究チームは、スイッチング機能を駆動するICを搭載することを計画している。
(詳細は、www.nasa.gov)