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水中を泳ぐ分子ロボットを創出

December, 7, 2021, 札幌--北海道大学大学院理学研究院の景山義之助教らの研究グループは,動物のように体を動かしながら泳ぐ,1mmより小さな分子ロボットを,人工的に作り出すことに成功した。

血管のような狭い空間を自在に泳げる分子ロボットの実現は,小説や映画の中で夢見られてきた。しかし,小さな分子ロボットを自律的に泳がせるためには,科学的に難しい二つの課題を解決しなくてはならない。一つは,変形を続けられる分子ロボットを作ること。またもう一つは,その変形によって分子ロボットが移動できるようにすること。
 景山助教らの研究グループは,2016年に「屈曲を繰り返す分子ロボット」を発表した。この研究では,その分子ロボットを水中で泳がせることに成功した。動物のように自分の体を自律的に動かして泳ぐ分子ロボットを実現した世界初の研究成果。

なお,この研究の背景には,プランクトンほどの大きさの物体は,ヒレを屈曲させるような往復型の変形だけでは泳ぐことはできない,という物理学における共通の理解がある。これに対して,この研究では,屈曲運動を示す分子ロボットが泳いだ。この事実は,ロボットが変形を繰り返したことに加えて,別の仕組みが働いていることを示している。研究グループは,分子ロボットに働く力を計算することを通じて,泳いだ空間が狭いことが分子ロボットの遊泳を可能にした主要因であると結論付けた。

分子ロボットが自律遊泳できることを実験的に示した研究は,分子ロボットの新たな可能性を示すものである。例えば,血管のような狭い水路を清掃したり,狭路を遊泳することで薬物等を送達したりする「自動運転型分子ロボット」の実現可能性を高めるなど,分子ロボット開発のさらなる発展を期待させる研究成果である。

研究成果は,Small誌にオンライン掲載された。
(詳細、https://www.hokudai.ac.jp)