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EPFL、アト秒分光学の能力増強

November, 26, 2021, Lausanne--スイス連邦工科大学(EPFL)の研究者は、強力な過渡吸収分光学技術が、分子の電子や核の超高速運動をリアルタイム、原子空間分解能で解明することを示した。

過去数10年、レーザベース技術では素晴らしい進歩が見られた。これは、原子物理学および分子物理学における著しい進歩につながった。超高速レーザパルスの開発により研究者は、分子の電荷輸送や化学反応の素過程など、超高速現象を研究することができる。しかし、それを超えて、アト秒スケールでそのようなプロセスを観察するわれわれの能力の意味は、自然のタイムスケールで個々の電子の動力学を操作、プローブも可能であるということである。

新興の超高速技術の1つは、アト秒過渡吸収分光学(ATAS)。これは、分子の特定サイトで電子の動きを追跡できる。この点はATASの特に魅力的な特徴である。原子スケールの空間分解能で分子システムの進化の追跡が可能になるからである。

最新のレーザによって化学は、光と物質の相互作用という未踏の領域に踏み込むことができる、ここでは、ATAS計測の結果を解釈する理論の役割が、かつてなく重要になる。しかしこれまでのところ、ATAS背後の理論は、原子あるいは分子のいずれかのためにのみ開発されてきた。核運動の欠如、あるいは電子コヒレンスの欠如した領域である。

今回、EPFLのLaboratory of Theoretical Physical Chemistry (LCPT)の物理学者チームが、ATAS理論を分子まで拡張した。これには、相関する電子-核動力学の一切が含まれている。

研究は、ハイデルベルク大学のAlexander Kuleffとの協働であり、Physical Review Lettersに発表された。

研究の筆頭著者、LCPTポスドク、Nikolay Golubevは、「われわれは、分子の吸収横断面積のための簡素な準分析的表現を紹介している、これは核運動と非断熱動力学を説明し、物理学的直感用語で構成されている」と説明している。

ATAS理論を拡張することで研究チームは、この分光学的技術が、分子の核転移によって起こる電子運動の後続デコヒレンスを「見る」十分な分解能をもつことも示している。

理論を実際に移す際に、チームは、多原子分子プロビオール酸を例としてテストした。

LCPT代表、Jiří Vaníčekは、「プロビオール酸のX線ATASシミュレーションは、最初からハイレベル電子構造法と効率的な反古典的核力学を組み合わせることで可能になった」と話している。分子における電子と核の相関する動きについての知見を深めることで、LCPT研究者の成果は、様々な他の「アトケミストリ“attochemistry”」現象の理解にも役立つ。

(詳細は、https://actu.epfl.ch)