November, 24, 2021, 東京--東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野の大野京子教授と先端視覚画像医学講座の堀江真太郎ジョイントリサーチ講座講師の研究グループは、青波長の走査型レーザ検眼鏡による広角眼底撮影の単一の眼底写真が造影剤を使用せずに広範囲の眼底の網膜無血管野を高率に検出できることを示した。
この研究は株式会社ニデックとのジョイントリサーチ講座の研究としておこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Asia Pacific Journal of Ophthalmologyに、2021年8月27日にオンライン版で発表された。
糖尿病網膜症を対象に、赤緑青の3色を有する走査型レーザー検眼鏡(ニデック社ミランテ)の青波長の広角眼底画像を通常の蛍光眼底造影検査の所見とともに比較検討することを行った。その結果、蛍光眼底造影検査で検出された網膜無血管野の約8割以上は青波長のレーザ走査型広角眼底画像でも確認できることが示された。
研究成果の意義
糖尿病網膜症の進行を示す網膜無血管野を調べるためには蛍光眼底造影検査を行う必要があった。一方で造影剤が使用できない症例や、使用へのリスクなどから、この検査にはハードルがあり、網膜虚血の存在が確認できず治療が遅れてしまう症例なども少なくないと考えられる。今回の研究では、青波長の広角走査型レーザ眼底撮影は造影剤無しで糖尿病網膜症における網膜虚血を高率に検出できることを示した。また糖尿病網膜症の無血管野の形成は網膜の広範囲に生じるため、広角眼底撮影の単一画像で無血管野を見落とすことなく簡易に検出できる可能性も示唆された。この方法は非侵襲的かつ簡易であるため、広く糖尿病網膜症患者の診断精度の向上につながり、新生血管のような重篤な合併症を起こす前に無血管野に対する治療を行えることで失明防止に貢献すると考えられる。
(詳細は、https://www.tmd.ac.jp)