July, 16, 2014, Munich--X線位相コントラストイメージングは、低い放射線量で対象の高精細画像を作り出す。しかしこれまで、このような画像は実現が難しく、一般に大型の粒子加速器にしか見られないような特性を持つ特殊X線光源を必要としていた。
研究チームは、前例のない輝度を持つ実験室の光源を用い、極めて簡単な設定で高信頼の位相コントラストを実現する新しいアプローチを実証した。研究チームはミュンヒェン工科大(Technische Universität München:TUM), スウェーデン王立工科大(the Royal Institute of Technology in Stockholm:KTH)、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(University College London:UCL)の研究者で構成されている。
X線位相コントラストイメージングは、吸収による減衰の代わりに、被検査物を透過するX線の屈折を使う方法。この方法で得られた画像は、吸収ベースの方法よりも遙かに高品質であることが多い。フランツ・ファイファー教授(Franz Pfeiffer)の研究チームは特に生物科学X線イメージングと治療の新しいアプローチを開発することに関心を持っている。X線位相コントラストイメージングもこれに含まれている。主目的の1つは、この方法がガンや、将来的には骨粗鬆症の診断など、臨床応用で使えることである。
研究チームは、X線位相コントラストイメージングの極めて簡単なセットアップを開発した。ソリューションは、直観に反するかもしれないが、X線をスクランブルしてランダム構造とする。これらのスペクルは、サンプルを透過しながら豊富な情報をエンコードする。スクランブルされたX線を高解像度X線カメラで撮り、測定後の解析段で情報を取り出す。
この新しい技術を使用して研究チームは、このアプローチの効率性と多用途性を実証した。「一度の計測で、減衰画像、位相画像、暗視野像が得られる。位相画像は、被検査物の推定厚さを正確に計測するために使用できる。暗視野像も同様に重要だ、というのは、材料の傷や繊維など、分解するには小さすぎる被検査物の構造を描いてくれるからだ」とイレーネ・サネッティ博士(Irene Zanette)は説明している。
光源の高輝度も、この成果の要件になる。光源には、固体ターゲットの代わりに、X線生成ターゲットに液体金属ジェットを用いた。「これにより、X線生成ターゲットに損傷を与えることなく、位相コントラストイメージングに必要な高強度が得られる」とKTHのTunhe Zhou氏はコメントしている。一度に全ての像を得るために、あるアルゴリズムでスペクルをスキャンし、被検査物によって生ずる形状と位置の微細な変化を解析する。
この新しい測定器の全てのコンポーネントが最先端の技術の所産と言うわけではない。X線をスクランブルするために、「1枚のサンドペーパーが完璧に仕事を成し遂げた」とサネッティ博士は付け加えている。
研究チームの次の目標は、位相コントラスト・トモグラフィ。被測定物の微細構造を3D表示できる技術。