August, 23, 2021, 京都--京都大学、野田進 工学研究科教授、井上卓也 同助教、池田圭佑 同修士課程学生(研究当時)、浅野卓 同准教授らの研究グループは、高温の物体から生じる熱輻射から、黒体限界を超える高密度の光電流を生成することが可能な、熱輻射光源/太陽電池一体型・熱光発電デバイスの開発に成功した。これは、太陽光(熱)や各種熱エネルギーを利用した、高出力密度かつ高効率な発電システムの実現に向けた重要な一歩であるといえる。
一般に、物質を高温に加熱すると、熱輻射が生する。例えば、太陽、白熱電球など、加熱された物体が光る現象は、全て熱輻射に基づくものである。このような熱輻射と太陽電池を組み合わせた熱光発電は、エネルギーの有効利用を可能とする発電方式の1つとして、近年、注目を集めている。しかし、熱光発電には、いくつかの重要な課題が存在する。その一つが黒体限界。これは、従来の熱光発電システムにおいては、熱輻射を一旦、自由空間(外部空間)へ取り出し、その後、太陽電池へ入射するが、自由空間に取り出す際に、光源内で発生した熱輻射パワーを全部取り出すことが出来ず、最終的に太陽電池で生成される電力密度(今回、特に光電流密度に着目)が、熱輻射パワーを全て取り出す場合に比べ、一桁以上小さくなってしまうという課題。
研究グループは、高温(>1100K)の熱輻射体と、室温に保った太陽電池を、透明(高屈折率)基板を介して、光の波長よりも十分小さな距離(<140nm)まで近づけた一体型熱光発電デバイスを開発することで、高温物体の内部で発生した高密度な熱輻射を、自由空間へ取り出すことなく、直接、太陽電池へと取り込むことを可能とした。その結果、従来方式に比べて5-10倍の密度の光電流を太陽電池で生成することに成功するとともに、最終的に黒体限界をも超える光電流密度の生成に成功した。この成果は、太陽光や各種熱エネルギーを利用した発電システムの大幅な小型化・高出力化・高効率化の第一歩を達成したものと言え、将来の脱炭素社会の実現の鍵を担う技術としての展開が期待される。 研究成果は、2021年7月28日に、国際学術誌「ACS Photonics」に掲載された。 (詳細は、https://www.kyoto-u.ac.jp)