August, 4, 2021, Cambridge--脳などの組織の高解像度3D画像を撮るには、2光子顕微鏡を使うことがよくあり、これは試料を高強度レーザで狙い、蛍光励起を誘発する。しかし、脳深部のスキャニングは、難しい。光が深部に進むと組織で散乱し、画像がぼやけるからである。
通常、その方式は個々のピクセルを一度に1個スキャンする必要があるので、2光子イメージングは、時間がかかる。MITとハーバード大学の研究チームは今回、2光子イメージングの改良バージョンを開発した。これは、組織のさらなる深部をイメージングし、以前に可能であったよりも遙かに高速に実行でる。
この種のイメージングにより研究者は、血管や脳内の個々のニューロンなどの構造の高解像度画像をより迅速に取得することがてきる。
「組織に入るレーザビームを改良することで、われわれは以前の技術よりもさらに深く浸透し、微細なイメージングができることを示した」とMIT研究者、新研究の著者の一人、Murat Yildirimは説明している。
論文の筆頭著者は、Cheng Zheng、Jong Kang Par。論文は、Science Advancesに発表された。
ディープイメージング
2光子顕微鏡は、近赤外光の強いビームをサンプル内の単一点に照射することで機能する。焦点での2光子の同時吸収を含んでおり、そこで強度が最高になる。この長波、低エネルギー光は、損傷を与えることなく組織深部に浸透し、表面下のイメージングを可能にする。
しかし、2光子励起は蛍光による画像を生成し、その蛍光信号は、可視光スペクトル域にある。組織サンプルをさらに深くイメージングすると、蛍光はますます散乱し、画像はぼやける。組織の多層をイメージングするのは非常に時間がかかる。組織の全面が一度に照射される広視野イメージングを利用すると、プロセスの高速化は可能だが、このアプローチの解像度は、1点毎のスキャニングほど高くない。
MITチームは、大きな組織サンプルを一度にイメージングでき,同時に1点毎のスキャニングの高解像度を維持できる方法の開発を考えていた。それを達成するために、サンプルを照射する光を操作する方法を考案した。チームは、広視野顕微鏡方式を使い、面状の光を組織に照射するが、その光の振幅は,異なる時間に個々のピクセルをON/OFFできるように改良されている。あるピクセルは明るいが、近傍のピクセルは暗いままである。この事前にデザインされパタンが、組織によって散乱された光の中で検出できるのである。
「われわれは、この種の変調によって各ピクセルをON/OFFできる。スポットのあるものをOFFにすると、それが各ピクセルの周囲にスペースを作る、したがってわれわれは個々のスポットの各々で何が起こっているかを知ることができる」(Zheng)。
研究チームは原画像を取得した後、チームが作成したコンピュータアルゴリズムを使って各ピクセルを再構成する。
「われわれは、光の形状を制御し、組織からの反応を得ることができる。これらの反応から、われわれは組織がどんな種類の散乱を持つかを解明しようとする。われわれの原画像から再構成すると、その原画像からは見えなかった多くの情報を得ることができる」(Yildirim)。
この技術を使って研究チームは、筋肉のスライスと腎臓組織の200µm程度の画像を撮り、またマウスの脳深部では300µm程度を撮れることを示した。Yildirimによると、それは、このパタン励起と計算再構成なしで可能なよりも2倍程度の深さである。その技術は、従来の2光子顕微鏡よりも100~1000倍高速に画像を生成できる。
脳の構造
この種のイメージングにより研究者は、血管などの他の構造とともに、脳のニューロンの高解像度画像を極めて迅速に取得できる。マウスの脳の血管をイメージングすることは、血流が、アルツハイマー病など神経変性疾患の影響をどのように受けるかについて知る上で特に有用である。
「血流あるいは血管構造の形態の研究は全て2光子あるい3光子ポイントスキャニングシステムをベースにしているので、それらはスピードが遅い。この技術を使うことでわれわれは実際に、血流や血管構造の高速立体イメージングを実行できる。目的は,血流の変化を把握することである」と同氏は話している。
その技術は、ニューロン活動にも適応可能である。ここでは、ニューロンが励起された時に光る膜電位感受性蛍光色素または蛍光カルシウムプローブを追加する。それは、腫瘍を含む他のタイプの組織の分析にも有用であり、腫瘍の端を決定する際に役立てることが可能である。
(詳細は、https://news.mit.edu)