July, 30, 2021, Washington--香港理工大学の研究チームは、メタレンズアレイベースの量子光源を初めて実証した。そのアプローチは、高次フォトンエンタングルメントとマルチフォトンのコヒレント制御の両方に有望なプラットフォームとなり、安全な通信、コンピューティングおよび他のアプリケーションに向けた量子技術の進歩に、それを適合させることになる。
その研究は、光学面にパターン化された微小、精密配列のナノ/マイクロ構造による光制御能力を活用している。その成果は、メタサーフェスである。香港理工大学のDin Ping TsaiがOSA Advanced Photonics Congressで研究成果を紹介した。
「われわれの成果は、メタサーフェスが複雑な量子状態の生成と制御のルートを提供し、量子システム次元の増加のみならずマルチフォトンのコヒーレント制御も可能にしていることを示している。したがって、先進的オンチップ量子フォトニック情報処理の開発にコンパクトで実用的なプラットフォームを提供している」とTsaiは説明している。
量子技術は、光の基本単位、フォトンを使って情報をエンコードできる。古典的なコンピュータが、2つの状態0と1のみを使って情報をエンコードするのに対して、量子デバイスは、フォトンの関係性に情報をエンコードする。シングルペアのエンタングルフォトンは、複数の量子状態を含むので、古典的デジタルシステムよりも遙かに多い情報を持つことができる。
新しい研究では、研究チームは、相互に結合し重ね合わせになる100ペアのエンタングルフォトンを生成する量子光源を作製した。同時にエンタングルフォトンを生成することで、そのアプローチを使って、微小なチップに膨大な情報量をエンコードできる。
これを達成するために研究チームは、光の波面を精密設計する目的で微小なアンテナを利用する一種のメタサーフェス、メタレンズアレイと非線形結晶(BaB2O4)を結合して高エネルギーフォトンを低エネルギーのエンタングルフォトンペアに変換した。これには自発的パラメトリック下方変換を利用した。そのメタレンズは、最先端のナノファブリケーションプロセスで作られ、一連の高さ800nmのGaNナノピラーで構成されている。光は、10×10メタレンズアレイを通してレーザで励起され、次に非線形結晶を通して、100のエンタングルフォトンペアを生成する。
フォトン間の量子エンタングルメントは、メタサーフェス設計に依存するので、研究チームによると、このアプローチは、既存の量子光源に比べると光操作の柔軟性は高く、量子光技術に新たな道を開く。
「われわれのメタレンズアレイベース量子フォトン光源は、コンパクト、安定、制御可能であるので、集積量子デバイスへの新たなプラットフォームを暗示している」(Tsai)。
研究チームは、結果として得た2、3、と4次元の量子状態を評価し、それぞれ98.4%、96.6%、および95.0%の忠実度を得た。また、その光源が、優れたフォトン識別不可能性を示していることを確認した。これはマルチフォトン光源にとって重要な特徴である。同様に適切なパワー依存性も確認した。
この素晴らしい新たな研究は、量子情報科学が、将来のわれわれの日常生活で多くのアプリケーションを実現する上で役立つ。例えば、量子活用セキュアモバイル通信、e-mail:アクセス、オンライ取引、キャッシュレスペイメント、ATMsやEバンキング。同様に、マシンラーニング、AI、ニューラルネットワークなどのハイレベルのコンピューティングタスク。
(詳細は、2021 Advanced Photonics Congress)