Science/Research 詳細

HKUST、新しいラマン分光プラットフォームを開発

June, 10, 2021, Hong Kong--低濃度タンパク質の分析は難しい、特に天然変位タンパク質(IDPs)など、様々な形態の混合では容易でない。Huang Jinqing教授をリーダーとする-香港科学技術大学(HKUST)の研究チームは、ラマン分光と結びつけた光ピンセットを開発した。これは、個々のタンパク質分子に焦点を当てることで、生理学的濃度で、パーキンソン病に密接に関連したIDP、アルファシンクレインの構造的特徴を直接プローブできる。

IDPsは、生物学プロセスでは重要な役割を担い、その多くは不治の神経変性疾患に関連している、典型的なIDPとして、アルファシンクレインには、第2構造として知られる安定した3Dアーキテクチャが欠如している。それは、一つの第2構造からもう1つへ自発的に変換するので、最終的にはパーキンソン病病理学に関わるタンパク質凝集の集積となる。しかし変換中に過渡種は様々な構造となり、動的平衡混合の中で低個体群に存在する。したがって、その構造的特徴は通常は、従来の計測技術の検出結果に埋もれている。従来技術は、大きなサンプル量、長い検出時間から検出された信号を平均化するからである。

研究では、Huang教授のチームは、光ピンセットと表面増強ラマン分光法(SERS)を新しいプラットフォームに統合して、水性環境で単一分子レベルの感度でチューナブル再現可能なSERS増強を生成する。目的は、これらIDPsの特性評価であり、同時に重要な生物学的意味をもつ、それ本来の異質性の維持である。特に、ホットスポットが可視化され、光ピンセットによって制御されることでタンパク質は、マイクロ流体フローチャンバに流れ込む。これにより、インサイチュ分光学的特性評価にとってリアルタイムで計測パラメタの調整が便利になる。優勢なモノマの中でα-シヌクレインの過渡種の構造的特徴を1µmの生理的濃度で直接同定する。これは、量と時間でアンサンブル平均化を低減することによって行う。こうすることで、アミロイドタンパク質凝集の開始を理解するための深い洞察が得られる。したがつて、SERSプラットフォームは、動的、不均質、複雑な生体系におけるIDPsの構造的情報を明らかにするための大きな潜在力を持つ。

「われわれの戦略により、2つのトラップされたマイクロメートルサイズの銀ナノ粒子被覆シリカビーズ間のホットスポットの正確な制御が可能になり、水生検出におけるSERS効率と再現性の改善となる。チューナブルSERS増強を別にして、統合された光ピンセットは、サブナノメートル分解能とサブピコニュートンの力感度を提供し、プラズモニックホットスポットにおける光と物質の相互作用をモニタし、特別な物理的洞察を提供する。さらに重要なことは、われわれの方法は、希薄液におけるIDPsの過渡種の特性評価に新たな扉を開く。これは、生物物理学界では重要な課題として残っている。究極的に、統合された光ピンセットの精密な力の操作をフル活用することで制御可能なホットスポット内部の1個のタンパク質を明らかにし、統合されたラマン分光学により、内因性分子振動からの構造的動力学を解明することができ」とHuang教授は説明している。

(詳細は、https://hkust.edu.hk)