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長波長の可視光に応答する半導体の新合成手法を開拓

May, 10, 2021, 福岡--九州大学 工学研究院 応用化学部門の林克郎教授他の研究グループは、良好な電子伝導性を持ちつつも元来可視光を吸収しないペロブスカイト型スズ酸バリウム(BaSnO3)をホスト材料として用い、酸素欠陥存在下でヒドリド(H-)をドープし、結晶内にSn2+を生じさせることによって、長波長の可視光に応答するスズ含有ペロブスカイト型酸水素化物半導体を合成した。
 この材料はこれまでに報告されているSn2+を鍵とした化合物よりも長波長の可視光を吸収・応答する。また、ヒドリド(H-)ドープによるバンド制御は容易でないため、これまでヒドリド(H-)を含有した光機能材料の報告例はほとんどなかった。
 この研究によって示された、酸化物ホストへのヒドリド(H-)導入や酸素欠陥と複合化させる事による可視光吸収材料の合成手法は、無毒で安価な鉛フリー光吸収材料合成のための新たな設計戦略となることが期待される。

太陽光の有効利用の観点から、広い波長範囲の可視光を利用できる光機能材料が求められている。可視光応答化の手段の一つとして、2価の鉛やスズ(Pb2+、Sn2+)などのローンペア電子を有する元素の利用が検討されてきた。特に鉛フリーの観点から、スズをベースとした可視光応答型半導体材料が光触媒やペロブスカイト太陽電池の分野で盛んに研究されているが、ローンペア電子を含むスズ化合物はこれまで酸化物やハロゲン化物に限られていた。

研究成果は、米国化学会の国際学術誌『Chemistry of Materials』のオンライン速報版で英国時間2021年5月4日に公開された。

研究グループ
九州大学 工学研究院 応用化学部門の林克郎教授、赤松寛文准教授、中央分析センターの稲田幹准教授、工学府 応用化学専攻の渡辺寛大学院生(当時)、東京工業大学の前田和彦准教授、八島正知教授、藤井孝太郎助教、中村将志大学院生、名古屋大学の長谷川丈二特任准教授

(詳細は、https://www.kyushu-u.ac.jp)