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室温さらには110℃で世界最高性能のスピン増幅を達成

April, 13, 2021, 札幌--北海道大学大学院情報科学研究院の樋浦諭志准教授,博士後期課程の佐藤紫乃氏(日本学術振興会特別研究員),高山純一技術専門職員,村山明宏教授らの研究グループは,スウエーデン・リンショーピン大学(Linköpings Universitet)及びフィンランド・タンペレ大学(Tampere University)との国際共同研究で,室温で90%,110℃でも80%もの高い電子スピン偏極を実用半導体で生成する光スピントロニクスナノ構造を開発した。

光スピントロニクスは,電子スピンによる超低消費電力の情報処理/記憶と, 熱損失がない光によるスピン情報の伝送を実現する光電情報インタフェースであり,電子と光の量子効果を活用する次世代の光電融合情報基盤を構築するコア技術。スピン情報の光変換には半導体が必須であるが,半導体ではスピン情報が容易に失われ, 実用に不可欠な高いスピン偏極が室温では得られなかった。

今回研究グループは,実用の光デバイス半導体材料である希薄窒化ガリウムヒ素(GaNAs)とインジウムヒ素(InAs)量子ドットからなる独自の量子力学的トンネル結合を開発した。室温でスピンフィルタリング増幅が働くGaNAsにより,超低消費電力のレーザ素子の材料として実用化が始まっており, さらに将来の単一光子量子情報デバイス材料としても期待されている量子ドット中の電子スピン偏極を大きく増幅することに成功した。この新しい半導体ナノ構造により,室温で90%,110℃でも80%もの世界最高の電子スピン偏極率を達成し,従来の半導体光スピントロニクスが抱えてきた, 実用化を妨げている最大の問題であった室温動作の壁を大きく打破した。

研究成果は,半導体光スピントロニクスのパラダイムシフトを引き起こし,磁性を持たない一般の実用半導体でありながら,電子のスピン偏極を室温以上でも高効率に増幅する革新的技術を創出し,超低消費電力のスピン情報光インターコネクションに向けた実用的な技術開発を加速する。

研究成果は, Nature Photonics誌にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.hokudai.ac.jp)