April, 9, 2021, Gothenburg--チャルマース工科大学(Chalmers University of Technology)の研究チームは、最先端のアプリケーションを現実に近づける画期的なマイクロコムを発表した。微小フォトニックデバイスは、新しい太陽系外惑星の発見、健康モニタ、インターネットのさらなる効率化に使える。
マイクロコムは、マイクロ共振器として知られる微小キャビティで多数の光周波数を生成できるフォトニックデバイス。これらの色は均一に分布されているので、マイクロコムは「光でできたルーラ」のように挙動する。そのデバイスは、非常に高精度に周波数を計測、生成するために利用できる。
Nature Photonicsに発表された論文で、研究チームは、マイクロ共振器をベースにしたチップに新しい種類のマイクロコムの実現を説明している。新しいマイクロコムは、コヒーレント、チューナブル、再生可能デバイスであり、現在の最先端技術よりも10倍高い正味の変換効率を達成している。
論文の筆頭著者、Óskar Bjarki Helgasonは、「その結果が重要である理由は、それらが比類のない特性の組合せを表していることだ。その分野では、前例がない効率、低電力動作と制御である」と話している。
チップ上にマイクロコムを実現したのはチャルマースの研究者が初めてではないが、チャルマースのチームは、その分野でよく知られた複数の限界を克服する方法を開発した。カギとなる要因は、2つの光キャビティ、マイクロ共振器の利用である。1つではない。この配置により独自の物理的特性が得られる。
チップに設置した新開発のマイクロコムは、人の髪の毛の端に収まるほどに小さい。コムの歯間ギャップは非常に広いので、研究者、エンジニアの双方に大きなチャンスが開ける。
幅広い潜在的なアプリケーション
ほぼどんな計測も周波数に関連付けられるので、マイクロコムには、幅広い潜在的なアプリケーションがある。例えば、光通信システムのエネルギー消費を根本的に減らす、データセンタで、1個のチップスケールマイクロコムにより数十のレーザが置き替えられるからである。また、自動運転車のLiDARにも使え、距離を計測する。
別の分野では、地球のような太陽系外惑星の発見に専心している天文台で使用されるスペクトログラフのキャリブレーションに利用できる。
非常に高精度の光時計、モバイルフォン用の健康モニタリングアプリケーションも可能性がある。呼気の成分を分析することで、早期に病気診断ができる。
「その技術が実用的になり、研究室の外で用途を見つけ出すために、われわれはマイクロ共振器に追加の素子をいっしょに集積する必要がある。レーザ、変調器、制御エレクトロニクスなどである。これは、難題である、おそらく5-10年を要する。またエンジニアリング研究への投資も必要である。しかし、それは実現すると考えている」と、その研究プロジェクトのリーダー、Victor Torres Companyは、コメントしている。
マイクロコムは、モードロックレーザの代替となる新しい技術であり、非常に高速に繰り返し光パルスを生成できる。微小な光キャビティ、マイクロ共振器にレーザ光を送り込むことでパルスが生成される。マイクロコムには、実用目的で極めて魅力的になる、2つの重要な特性をもつ。マーカー間の周波数間隔は、非常に大きい(一般に10 – 1,000 GHz)、これはモードロック周波数コムの間隔を遙かに上回る。また、周波数コムはフォトニック集積技術と実装可能。フォトニック集積との適合性により、サイズ、消費電力削減に利点がある。また量産アプリケーションの可能性がある。大きな歯間の意味は、マイクロコムが新しいアプリケーションで使えるということである。例えば、光ファイバ通信システムの光源、ピュアマイクロ波電磁放射など。
チャルマース大の新しい強化版マイクロコムのカギは、1つではなく、2つののマイクロ共振器を使ったこと。マイクロ共振器は、相互作用する。二原子分子を形成する時に原子が結合するのと類似である。この配置は、フォトニック分子として知られており、固有の物理的特性を持つ。
(詳細は、https://www.chalmers.se)