June, 24, 2014, Fremont--EPFL(École Polytechnique Fédérale de Lausanne)の研究チームは、フォトニック結晶ナノキャビティ(PCN)を最適化する迅速で効果的な方法を開発している。この方法は、今後の光回路の開発前進を促進する、新しい世代の構造設計につながある。
電子回路が電荷で動作するように、光回路が光パルスを処理すると、スピードの点で大きな利点になる。光技術は精力的な研究の対象となっており、狙いはナノメートルスケールで光を制御できる新しい光デバイスの開発にある。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは、前例のない効率性で幅広く使えるレベルの光デバイスを適切に設計できる新しい方法を開発した。その方法は米国、ロチェスタ大学で製造に移され、イタリアのパビア大学でテストに成功している。
将来の通信システムで情報のエンコードに光を利用するには、信号の「混雑」を避けるために光の流れを規則的にし、1秒のわずかな時間でも、それを保持することが先ずは必要になる。これは光ナノキャビティにより達成されている。ナノキャビティはミラーを配置したもので、その間で光を共振させるので小さな空間に光を閉じ込めることができる。このようなキャビティはレーザや光デバイスで広く用いられており、シリコンなど様々な材料でできている。光ナノキャビティは光回路構築に理想的である。ちょうど従来のトランジスタが電子の流れを規則的にするように、光の流れが規則的になる。光回路は電子回路と集積して極めてコンパクトな構造にすることができ、これによって情報技術と通信技術のパフォーマンスが向上する。
最も有望な光ナノキャビティは、いわゆる「フォトニック結晶」内に造られ、「フォトニッククリスタルナノキャビティ(PCN)」と言われている。PCNは電子回路のように動作するが、電子の流れではなく、光の流れを制御する。この複雑な形態のために、PCNの最適化は楽な仕事ではなく、ナノ製造に最適なものを選ぶまでに何百もの可能なデザインを、時間をかけてコンピュータシミュレーションしなければならない。
EPFLのVincenzo Savona氏のグループは、PCNを設計、シミュレート、最適化する新しい方法を開発した。それを、商用光回路で広く使用されている、ごくありふれたPCNタイプの1つに適用した。目的は、PCNのQ値を最大化すること。「われわれが最適化しているナノキャビティは、光波長そのものよりも小さく、Q値は100万以上。つまり、フォトンが放出されるまでに、キャビティ内を100万回以上往復できることを意味する」とSavona氏は説明している。
研究チームは、数分で1個のPCN構造をシミュレートできるコンピュータモデリングアルゴリズムを完成させた。商用ツールでは一般に数時間かかる。PCN最適化は数千の異なる構造をシミュレートする必要があるので、この新しいアプローチは、時間と効果の点で大きな利点がある。
この高速アルゴリズムを最適化ソフトウエアツールと組み合わせた。このツールは、最良のナノキャビティ構造選択に一種の自然淘汰を用いるので、「遺伝的」「進化的」と言われている。この進化的プロセスは、個々のPCN構造を人々の中の1個人と見なすことで始まる。個々のPCN構造は増殖するので、2つのPCN構造を組み合わせて、両者のクロスオーバとなる新しい構造ができる。
PCN生成は続いて起こるので、Savona氏のアルゴリズムは迅速に構造をシミュレートし、進化的ソフトウエアが最良の構造を選択する、この場合は、所望の品質、例えばフォトンの寿命、周波数に関して「適合性」を示すもの。プロセス全体は完全に自動化されており、一般には数百世代に関与する。各世代が100比の個(ここでは、構造)を含んでいる。「われわれの高速法は、コンピュータを使った最適化が数日かかることを示している」(Savona氏)。
最良のPCNデザインが米国の研究所に送られ、シリコンプラットフォームでナノ製造される。そこから、PCNはイタリアの別の研究所に出荷され、そこでテストに成功した。デバイスは、これまでに計測されたPCNで最高のQ値を示した。
(詳細は、www.epfl.ch)