June, 24, 2014, Livermore--サンディア国立研究所は、ライス大学、東京工業大学と協働で、カーボンナノチューブベースの新しいテラヘルツディテクタを開発した。これにより、医療イメージング、空港の乗客スクリーニング、食品検査などで大幅な改善が期待できる。
Nano Lettersに発表された論文によると、この技術はカーボンナノチューブを使って、冷却無しでテラヘルツ(THz)周波数域の光を検出できる。
サンディアのFrançois Léonard氏によると、テラヘルツ域の光エネルギーは可視光と比べると遙かに小さい。「その光を効率的に吸収し、電気信号に変換する材料は多くない。したがって、他のアプローチを探す必要がある」。
カーボンナノチューブは、炭素原子で構成された長く、薄いシリンダーで、直径は1~10nmの範囲であるが、長さ数センチにすることができる。炭素結合は非常に強いので、いかなる変形にも耐える。
同氏によると、科学界はカーボンナノチューブのテラヘルツ特性に以前から関心を寄せていたが、実際のところ今日までの研究の全てが理論かコンピュータモデルベースだった。カーボンナノチューブを用いたテラヘルツセンシングの研究論文は極めて少なく、しかも主に単一ナノチューブか単一のナノチューブバンドルに注力していた。
問題は、テラヘルツ波が相対的に大きいため、テラヘルツ照射を単一のナノチューブに結合するためには一般にアンテナを必要とすることにある。研究チームは、ライス大学の研究者Robert Hauge氏と院生Xiaowei He氏が開発した小さく、裸眼で見えるディテクタにより、アンテナを使わずにカーボンナノチューブ薄膜を利用する方法にたどり着いた。この技術は簡単に作製でき、研究チームの最も重要な成果の1つとなっている。
Léonard氏によると、カーボンナノチューブ薄膜は、電磁光の極めて優れた吸収体である。テラヘルツ域では、このナノチューブ薄膜が入力THz照射の全てを吸収する。ナノチューブ薄膜は、光を効果的に吸収できることから「最もブラックな材料」とさえ呼ばれている。
研究者は、ナノサイズのチューブをいくつかまとめてラップしてマクロな薄膜を作製することができた。この薄膜は、金属と半導体カーボンナノチューブの混合を含んでいる。
ライス大学のJunichiro Kono氏によると、半導体や金属はナノスケールで高密度共存できないため、このようなことはできないが、カーボンナノチューブで達成できた。
同氏は、「この技術が決め手になる。金属ナノチューブの非常に優れたTHz吸収特性と、半導体カーボンナノチューブ固有の電気特性を組み合わせているからだ。これにより、動作にパワーが必要ないフォトディテクタが実現でき、しかもパフォーマンスは既存技術に匹敵する」と説明している。
Léonard氏は、次のステップは、THzディテクタの設計、エンジニアリング、パフォーマンスの改善であると言う。例えば、光源を必要とするアプリケーション向けに、THz光源をディテクタと統合する必要がある。さらにエレクトロニクスもシステムに統合し、カーボンナノチューブ材料の特性を一段と改善する。
(詳細は、Nano Letters “Carbon Nanotube Terahertz Detector”)