April, 2, 2021, Chalmers--チャルマース工科大学の物理学者は、ロシアとポーランドの研究者と協力して、室温で光と物質の超強力な結合を達成することができた。基礎物理学にとって重要な発見であり、例えば、光源、ナノマシナリ、量子技術の進歩に道を開く可能性がある。
2つの結合発振器は、物理学では最も基本的かつ十分なシステムである。2つの発振器の結合度は重要パラメータであり、ほぼ結合システムの挙動を決める。しかし、両者の相互結合の上限について、またそのような結合がどんな結果を持つかについてほとんど議論されたことがない。
Nature Communicationsに発表された研究成果は、いわゆる超強力結合の領域を垣間見せる。ここでは、結合力は、共振器の共振周波数に相当する。この研究での結合は、微小システムにおける光と電子間の相互作用により実現されている。システムは、わずかな間隔で分離された2つの金ミラーとプラズモン金ナノロッドで構成されている。人の髪の毛端よりも100倍小さな表面で、環境条件、室温と大気圧条件で光と物質の制御可能な超強力相互作用を作り出せることが示された。
「超高強度結合を実現したのはわれわれが初めてではない。しかし、そのような結合度達成には、一般に、強力な磁界、高真空と超低温が必要になる。それを通常の実験室で行えると、より多くの研究者がこの分野で研究することができ、ナノテクノロジーと量子物理学の境界における貴重な知見が得られる」とDennis Baranovは話している。
光と物質が混合して普通の物体になる独自のデュエット
研究チームが実現したそのシステムを理解するためには、共振器を考えれば良い。この場合、数百ナノメートルで分離された2つの金ミラーである。ミラー間に作製されたナノロッドは、ミラー間の光の動き方に影響を与え、その共鳴周波数を変える。シングルトーンで響く代わりに、その結合システムではトーンは2つに分かれる。低いピッチと高いピッチである。2つの新しいピッチ間のエネルギー分離は、相互作用の強さを表す。特に、超高強度結合の場合、相互作用の強さは、非常に大きいので、元の共振器の周波数に匹敵する。これは、固有のデュエットになり、そこでは光と物質が混合して1つの一般的な物質になり、ポラリトンと言われる擬似粒子を形成する。ポラリトンのハイブリッド特性は、魅力的な光学的、電子的特性を持つ。
その発見により研究者は自然法則を利用できる
この研究を特別に興味深くしているものは、ナノロッドの数が真空エネルギーをどのように変えるかを間接的に計測できたことである。これは、結合システムのトーン(すなわち、ナノロッドのミラーを通して光透過スペクトルを見る)を「聞き」、単純な数学を実行することによって行われた。結果としての値は、熱エネルギーだと分かった。これは、将来観察可能な現象になる。
「比較的シンプルなシステムで超高強度結合を室温で制御できるというコンセプトは、基礎物理学のテストベッドを提供する。この超高強度結合がエネルギーに負担をかけることは、観察可能な効果につながる。例えば、化学反応の改良、あるいはファンデルワールス力相互作用の調整を可能にする。超高強度結合により、様々な素晴らしい物理的現象が可能になる」とチャルマース工科大学の物理学部准教授、Timur Shegaiは話している。言い換えると、この発見により研究者は、自然法則で研究し、結合の限界をテストできる。
「話は極めて基本的であるので、潜在的なアプリケーションは広い可能性がある。われわれのシステムによりさらに強力なレベルの結合さえ可能になる、ディープストロング結合(deep strong coupling)として知られるものだ。われわれのシステムで結合の限界が何であるかについては、まだ確信がないが、われわれが現在考えているよりも遙かに高いことは明らかである。重要な点は、超強力結合の研究をしているそのプラットフォームが、現在、室温で利用可能になっていることだ」とTimur Shegaiはコメントしている。
(詳細は、https://www.chalmers.se)