Science/Research 詳細

近赤外線ハイパースペクトルイメージングでマウス肝臓中の脂質濃度可視化

April, 1, 2021, 東京--東京理科大学基礎工学部材料工学科の大久保喬平助教、曽我公平教授、大阪市立大学大学院医学研究科分子生体医学講座病態生理学の大谷直子教授らの研究グループは、機械学習を組み入れた近赤外線ハイパースペクトルイメージングを活用し、マウスの肝臓中の脂質濃度を可視化する手法を開発した。この研究は肝臓中に存在する脂肪酸鑑別の第一歩と位置付けられる重要な成果であり、このイメージング技術は、非標識のまま肝臓内の脂質組成と局在の観察を可能にする新たなツールになると期待される。

肝臓組織における過剰な脂質の蓄積は非アルコール性脂肪性肝疾患の特徴とされており、脂質分布と肝疾患の間には密接な関係があることが明らかになりつつある。肝臓における脂質分布は、脂肪肝と脂肪肝に関連した肝炎や肝がんの重症度を診断する重要な手がかりにもなる。そのため、脂質分布を非侵襲・非標識で定量的に計測できるモダリティの開発が求められている。

研究では、マウスの肝臓を対象として、近赤外域における微弱な吸収を利用したハイパースペクトル画像を取得し、部分的最小二乗回帰(partial least square regression: PLSR)とサポートベクトル回帰(support vector regression: SVR)による回帰分析を行った。その結果、正規化手法の一つである標準正規変量(standard normal variate: SNV)変換による前処理を行ったSVRでは、決定係数は0.97と高い値を示し、PLSRよりも優れていた。このことから、SVRを利用した機械学習によって、マウスの脂質の定量的な分布が可視化できることが示された。
近赤外線に対する分子の微弱な吸収を手がかりにした非標識・非侵襲なこのイメージング技術は、非アルコール性脂肪性肝疾患の診断への応用、脂肪肝の発病機序の解明に役立つと期待される。研究成果は、Biomedical Optics Expressに発表された。

(詳細はhttps://www.tus.ac.jp)