April, 1, 2021, 大阪--ベルギーの研究所IMECのKristof J.P. Jacobs博士とEric Beyne博士、大阪大学レーザー科学研究所の斗内政吉教授、村上博成准教授、芹田和則特任助教および大阪大学大学院工学研究科の大学院生の村上史和(博士前期課程)は、大阪大学発の技術であるテラヘルツ波放射顕微鏡(LTEM)を用いることで、3次元回路の重要な要素であるシリコン貫通電極(TSVs)の非破壊・非接触評価に初めて成功した。
シリコン貫通電極(TSV)は、3次元集積回路において、2次元的集積回路を立体的に連結させるために不可欠な要素だが、作成したTSVの電気伝導特性など局所的な分析を非破壊・非接触で分析・検査する技術はなかった。
IMECでTSVプロセスを研究してきたJacobs博士から、その分析にテラヘルツ放射顕微鏡を適用できる可能性が提案され、日本学術振興会外国人研究者招へい事業の支援を受けて、今回、国際共同研究グループは、LTEMがTSVを非破壊・非接触で分析・検査する技術に応用できることを実証した。これは、フェムト秒レーザをTSVに照射し、その時に表面近くで発生する瞬時的な光電流によるテラヘルツ波を検出することで、TSV周辺での電荷の動きや電磁波の伝搬を観測するもので、金属・絶縁層・シリコン半導体の柱状構造を3次元的に分析・評価できる可能性を示した。
今回の成果は、大阪大学が長年、独自に開発してきたテラヘルツ放射顕微鏡を応用したもので、世界で最も優れた半導体研究開発団体であるIMECとタッグを組んで成功させたものである。今後、世界的な半導体研究開発の場面で利用され、その技術が、高性能3次元半導体集積回路の開発や作製に大きく貢献し、結果的に電力や水資源の消費削減につながることが期待される。
研究成果は、Springer Nature出版「Nature Electronics」に、公開された。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)