March, 31, 2021, Seoul--KAISTの研究者と国内外の協力者は、音響グラフェンプラズモン(AGP)場を直接近接場イメージングする新方法の実証に成功した。この戦略は、強化された光と物質の相互作用、低伝搬損失の次世代、高性能、グラフェンベースオプトエレクトロニックデバイスで音響グラフェンプラズモンプラットフォームの実用的アプリケーションへのブレイクスルーとなる。
先頃、「グラフェンプラズモン」、光の電磁波と結合したグラフェンにおける自由電子の集団振動を使って、グラフェンと金属シートを分離する、極薄誘電体層内の光波をトラップし圧縮できることが証明された。そのような構成では、グラフェンの伝導電子は、金属内に「反射される」ので、光波がグラフェン内の電子を「押す」と、金属の鏡像電荷が振動を始める。この新しいタイプの集団電子振動モードは、「音響グラフェンプラズモン」(AGP)と言われている。
AGPの存在は、以前は、遠視野赤外分光法やフォトカレントマッピングなどの間接的方法で観察できただけである。この間接的観察では、ナノメートルの薄い構造内に光波を強く圧縮することになる。デバイス外部の電磁場強度はAGPの直接的近接場光イメージングには不十分であると考えられていた。
こうした限界に挑戦して研究グループは、先進的ナノファブリケーション法を使うことで独自の実験技術を構築した。研究成果は、Nature Communicationsに掲載された。
KAIST電気工学部、Min Seok Jang教授をリーダーとする研究チームは,高感度散乱タイプスキャニング近接場光顕微鏡(s-SNOM)を使って,ナノメートルの薄い導波路を伝搬するAGP波の光場を直接計測し、中赤外光の1000倍圧縮を初めて可視化した。
Jang教授と、ポスドク研究グループ、Sergey G. Menabdeは、急速に減衰するが常にグラフェン上に存在する電場を利用することでAGP波の直接画像の取得に成功した。AGPsは、そのエネルギーのほとんどがグラフェン下の誘電体内部で流れていても検出可能であることを示した。
これは、プラズモン波が長距離伝搬できるナノ導波路内部の超スムース表面によって可能になった。研究チームがプローブしたAGPモードは、同様の条件下でグラフェン表面プラズモンと比べて、規格化された伝搬長に関して、最大2.3倍閉じ込められ、1.4倍高い性能指数を示した。
実験に使用された導波路の、これらウルトラスムースナノ構造はテンプレートストリッピング法を利用して、Sang-Hyun Oh教授とミネソタ大学電気・コンピュータ工学部ポスドク研究者In-Ho Leeが,作製した。
成均館大学校(Sungkyunkwan University)基礎科学研究所(IBS)の集積ナノ構造物理学センタ(CINAP)で、Young Hee Leeと研究チームは、単結晶構造のグラフェンを合成した。またこの高品質、大面積グラフェンは、低損失プラズモン伝搬を可能にした。
多くの重要な有機分子の化学的、物理的特性は,中赤外スペクトルの収集シグネチャによって検出,評価できる。しかし、従来の検出法は、検出成功に多くの分子を必要とする。それに対して超圧縮AGP場は、顕微レベルで強力な光と物質の相互作用を提供するので、検出感度は1個の分子まで著しく改善される。
さらにJang教授のチームは、中赤外AGPsが本質的にグラフェンの損失にあまり影響されないことを実証した。これは、AGP場がほとんど誘電体に閉じ込められているからである。研究チームの報告した結果は、AGPsが電気可変グラフェンベースオプトエレクトロニックデバイスの有望な候補になることを示唆している。これは,一般に、メタサーフェス、光スイッチ、フォトボルテイック、および赤外周波数で動作する他のオプトエレクトロニックアプリケーションなどのグラフェンでは高い吸収が問題となっているからである。
Jang教授は、「われわれの研究は、音響グラフェンプラズモンの超圧縮電磁場は、近接場顕微鏡法で直接アクセス可能であることを明らかにした。この認識は、他の研究者がAGPsを様々な問題に適用する根拠となる。そこでは、強力な光と物質の相互作用、低い伝搬損失が必要とされているからである」とコメントしている。
(詳細は、https://news.kaist.ac.kr)