March, 17, 2021, Washington--複数の研究機関の研究グループが、新しいメタマテリアルタイルを開発した。これは,チリの秀でたサイモン天文台に建設中の望遠鏡の感度向上に役立つ。タイルは、2022年までにその天文台に導入されるレシーバに組みこまれた。
サイモン天文台は,宇宙初期から残された電磁放射、宇宙マイクロ波背景放射を計測する意欲的な取組の中心にある。これには、世界最大にして最も高性能な地上望遠鏡のいくつかを使用する。この計測は、宇宙がどのように始まり、それが何でてきていて、今日の姿にどう進化してきたかについて、われわれの理解向上に役立つ。
「サイモン天文台の望遠鏡は、新しい超高感度ミリ波カメラを使用して、前例のない感度でビッグバンの残光を計測する。われわれは、新しいローコストの吸収タイルを開発した。これらはカメラで使用され、われわれが計測したい信号を覆い隠す環境放射を吸収する」と路論文の筆頭著者、ペンシルバニア大学、Zhilei Xuは説明している。
Applied Opticsで研究チームは、開発したメタマテリアルマイクロ波タイルが、ミリ波放射の99%以上を吸収し、ミリ波カメラが動作する極低温環境でその吸収特性を維持することを紹介している。
「タイルは、商用入手可能な材料を射出成形して作ることが可能なので、経済的であり、量産でき、長期にわたる未解決の問題に簡単にインストールできるソリューションである。この技術で、サイモン天文台は、多くの点でわれわれの宇宙理解を変革する。宇宙の始まり、銀河の形成と進化、最初の星の輝きなどである」とXuは説明している。
低温動作
地上のミリ波望遠鏡は、ノイズを低減して感度を高めるために、極低温に冷却したレシーバを使用する。レシーバ技術は、迷光量が画像を劣化させ、ディテクタ感度を低下させる点まで進化した。レシーバ内の迷光を抑制する、より優れた方法は、深宇宙から来るかすかな信号に対する感度をさらに高めることであると考えられる。
しかし、そのような極低温で動作しながら迷光を抑制できる材料の開発は、極めて困難である。以前の試みは、効果的に極低温まで冷却できないか、必要な低反射率と高吸収の組合せを達成しないかのいずれかだった。他のソリューションもインストールが難しく、量産が困難になりがちだった。
これらの課題を克服するために研究チームはメタマテリアルに眼を向けた。それらが、自然では起こらない特殊な特性を達成するように設計できるからである。複雑な電磁シミュレーション研究後、チームは、炭素粒子とプラスチックを組み合わせた材料をベースにしたメタマテリアルを設計した。
反射低減
プラスチック複合材は、電磁スペクトルの所望のミリ波領域で高吸収を示したが、その表面は、放射が材料内部に入って吸収される前に、かなりの量を反射した。その反射光を低減するためにチームは、射出成形を利用して適合させた反射防止コーティングを加えた。
「高吸収バルク材料と組み合わせた低反射率表面により、メタマテリアル吸収タイルは、絶対零度付近の極低温で不要な信号の優れた抑制を達成した」(Xu)。
新しいメタマテリアルでできたタイルが、室温から極低温までの熱サイクルを機械的に生き残ることを確認後、研究チームは、タイルが-272° C (-458° F)に効果的に冷却できることを検証し、その光学性能を計測した。「われわれは、そのタイルのパフォーマンスを高い忠実度で計測するためにカスタムテストファシリティを開発した」とシカゴ大学院生、Grace Chesmoreはコメントしている。同氏は、この研究の光学計測のリーダー。テストは、そのメタマテリアルが低散乱の優れた反射特性を示し、それが入射フォトンのほぼ全てを吸収することを示した。
「ディテクタ感度は,ミリ波望遠鏡に向けて改善を続けるので、散乱フォトンの制御が極めて重要になる。メタマテリアルと射出成形製造の組合せ成功が、ミリ波計測科学的計測器設計に大きな可能性を開く」とXuは話している。