March, 16, 2021, Rochester--Nature Nanotehnologyに発表された論文で、ロチェスター大学、ケースウエスタンリザーブ大学(Case Western Reserve University)の研究者は、Fano Resonance Optical Coatings (FROCs)という新しい種類の光学コーティングを説明している。これは、フィルタとして使用して、非常に純度の高い色を反射、透過することができる。
さらに、そのコーティングは、非常に狭い範囲の波長域だけを完全反射するようにもできる。
ロチェスター大学光学研究所、論文の責任著者、Chunlei Guoは、「反射光の狭さは重要である。波長を非常に正確に制御したいからである。われわれの技術以前には、これができる唯一のコーティングは多層誘電体ミラーだった、それは極めて厚く、強い角度依存性があり、作製が著しく高価だった。したがって、われわれのコーティングは、ローコストで高性能な代替となる」と話している。
研究者は、その新技術のアプリケーションをいくつか考えている。例えば、太陽スペクトルをサーマルバンドとPVバンドを分離するためにFROCsをどのように使えるかを紹介している。そのような機能は、ソーラエネルギーオプションとしてハイブリッド熱電発電を利用するデバイスの有効性を改善することができる。「太陽スペクトルの有効帯域だけをPVセルに向け、その加熱を阻止する」とGuoは言う。
その技術は、PVセルの寿命を6倍に延ばす。スペクトルの残りは、「熱エネルギーとして吸収され、他の方法に利用可能である、夜間のエネルギー蓄積、発電、ソーラ駆動水の衛生、あるいは給水の加熱など」(Guo)。
「これらの光学コーティングが、他のコーティングができない多くのことができることは明らかである」(Guo)。
光学コーティングにファノ共鳴を適用
Guoの研究所、高強度フェムト秒レーザ研究所は、金属表面に比類のない特性をエッチングするためにフェムト秒レーザを利用する先駆的な研究で知られている。
FROCプロジェクトは、レーザエッチングをともなわない独自の表面を作る「並行」方法を探求する考えから得られた成果である。「アプリケーションの中にはレーザで簡単にできるものもあるが、レーザを使わないで簡単にできるものもある」(Guo)。
ファノ共鳴は、物理学者Ugo Fanoに因んだ名であり、広範囲にわたる波の散乱現象である。電子に関わる原子物理学の基本原理として最初に観察された。その後、研究者は、その同じ現象が光学系でも観察できることを発見した。「しかし、これは非常に複雑な設計をともなう」とGuoは説明している。
研究チームは、、その光学コーティングでファノ共鳴を活用するもっと簡素な方法を確認した。
チームは、15nm厚のゲルマニウム膜を金属表面に適用し、広い波長帯域を吸収できる表面を作製した。さらに、それと狭帯域共鳴をサポートするキャビティとを統合した。その結合キャビティは、非常に狭い光帯域を反射することができるファノ共鳴を示す。
(詳細は、https://www.rochester.edu)