June, 19, 2014, Karlsruhe--カールスルーエ工科大学(KIT)の研究者とフランスのパートナーは、量子コンピュータ実現に向けた重要な一歩を踏み出すことに成功した。単一分子磁石におけるスピンカスケードを利用して、研究チームは核スピンを電界で操作する方法を実証した。電気操作により、量子ビットの迅速かつ明確なスイッチングが可能になる。
ナノテクノロジーの最も意欲的な目標の1つが量子コンピュータの実現である。量子力学原理に基づいたそのようなコンピュータは、古典的なコンピュータよりも遙かに効率的に問題を解くことができる。量子コンピュータは最小計算ユニットとして、量子ビット(qubit)を用いる。qubitは核スピン、つまり原子核の内的な角運動量に依存する。上向き、下向きの磁界に対して向きを合わせる。qubitの相互リンクは、量子状態の混合となり、それに基づいて多数の計算ステップが並行して実施できる。
核スピンベースのqubitを電子回路に統合し、特に新しい情報処理を始動させるには、核スピンの特殊電気的操作が必要になる。KITと国立科学研究センタ(CNRS)の研究グループは先頃、純電気的方法で単一核スピンを操作することに初めて成功した。「磁界ではなく電気を使うことは、通常の電子回路で量子状態を取り扱うことに道を開く。量子状態は、いわゆる変位電流によって操作できる。すると、電子的に直接読み出すことができる」とKITの分子材料研究所長、Mario Ruben教授は説明している。
実験で研究グループが使用したのは、核スピン-qubitトランジスタ。これは3つの電極(ソース、ドレイン、ゲート)に接続した単一分子磁石で構成されている。この単一分子磁石はTbPc2分子、テルビウムの単一金属イオン、これは炭素、窒素、水素原子の有機フタロシアニン分子で包まれている。電界とスピンの間のギャップは、いわゆる超微細シュタルク効果でブリッジされている。これが電界を局所的磁界に変える。この量子力学プロセスは、すべての核スピンシステムに移転され、核スピンにおける量子効果を電子回路に統合するための全く新しい展望が開ける。